それでは、第3回です。今回はチェルシーとアーセナルの本拠地、さらにナショナルスタジアムのウェンブリーです。
❺スタンフォード・ブリッジ(イギリス)
プレミアリーグ(1部)のチェルシーFCの本拠地であり、41,798人収容のスタジアムです。総工費5億ポンド(約736億6,000万円)をかける、60,000人収容の新スタジアムの建築計画がありましたが、2018年5月にクラブのプレスリリースにて計画の凍結を発表しています。
ロンドンの中心駅のKings Cross駅から地下鉄で約30分のFulham Broadway駅から徒歩4分に位置し、複数の駅が周辺に点在(1km圏内に4駅)しています。高級住宅街に位置していることも特徴です。街の随所にチームのフラッグが立っていたので、住民の方々はクラブを強く受け入れているように感じました。
レストランやカフェ、ホテル、ショッピングモールなどがスタジアムに隣接しており、周辺環境は充実していました。隣接するホテルの宿泊者からの評価※もかなり高いです。遠いところから来るアウェイチームのサポーターからしたらありがたいだろうな、と感じました。
※ブッキングドットコムの☆評価調べ
敷地内にはWi-Fi環境も整っており、レストラン内などの広範囲に通信が繋がっていました。私はレストランにて6.50ポンド(約960円)でサンドイッチを食べたのですが、ボリューミーで美味しかったです。
ピッチとスタンドの距離が極めて近かったです。
1階スタンドは傾斜が浅いため選手に近い目線で観戦ができ、上層階は傾斜が急なためピッチをより広く観ることができるように造られていました。そういった構造もあり、1階スタンドからは、雨水をピッチサイドに捌くために設けられているピッチの傾斜が非常にわかりやすかったです。
スクリーンビジョンはコーナー上部に対角線上で2箇所設置されていたのですが、サイズが他スタジアムに比べて小さいため遠目からだと見えにくく感じました。また、バックスタンドの上層階から試合観戦をした際に、照明を付ける支柱になっている横柱が邪魔をしてスクリーンビジョンが全く見えなかったです。
また、コーナー部分(上記の写真に映る)の各座席の後部にWi-Fi接続に必要な情報が記載された紙が貼り付けられていました。原始的かもしれないですが、やはり視界に入る位置に必要情報が掲載されているのは助かります。
試合日以外に実施されている「スタンフォードブリッジ・スタジアムツアー&ミュージアム※」は20分おきに開催されており、クラブスタッフがスタジアム内を案内してくれます。
※公式の購入ページから19ポンド(約2,800円)~購入可能
私が参加した昼間の時間帯には約30人のツアー参加者がいたのですが、恐らく25人以上はイギリス以外の方でした。
ツアー冒頭に案内人のクラブスタッフの方にアイスブレイクがてら参加者全員が国籍と好きなチームを回答したのですが、全員他チームが好き(マンUファンが5人ぐらい居た)と答え、クラブスタッフの方はショックを受けていました(笑)
しかし、それは裏を返せば、「ライバルチームのファンだったとしても参加したくなるスタジアムツアー」と思ってもらえているということでしょう。
代表的なものが日本語も搭載されている多言語対応のオーディオガイドです。
この機器はエリアごとに勝手に案内が始まります。各フロアの説明や裏話をテキストと音声にて紹介をしてくれると共に、歴史的なシーンなどの映像を表示してくれます。画面を傾けると映像の見え方が変化する技術には驚きました。
各エリアごとの裏話やスタジアムの歴史や設計のこだわりなどについての説明もテキストでこと細かに教えてくれるため、よりチームやスタジアムへの理解が高まりました。
強豪ひしめくプレミアリーグの中で"富裕層の支持層が多い"と称されることが多いチェルシーですが、幅広い年齢層や国籍の人からも高い満足度を得るための工夫が多く盛り込まれていました。
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❻エミレーツ・スタジアム(イギリス)
プレミアリーグ(1部)のアーセナルFCの本拠地であり、60,432人収容のスタジアム。2006年7月に開場。1913年から2006年までクラブの前ホームスタジアムとして使用していたアーセナル・スタジアム(通称:ハイバリー)からわずか約800mの距離に建てられました。
ロンドンの中心駅のKings Cross駅から地下鉄で5分のHolloway Road駅から徒歩5分に位置し、複数の駅が周辺に点在(1km圏内に3駅)しています。私は鉄道を使ったのですが、都市中心部から非常に近くて楽でした。来場者の約95%が徒歩・公共交通機関を使うそうです。
スタジアム周辺は改築後に再開発が進められた関係でアパートなどの住宅街が多く、飲食店やバーなどの飲み屋も豊富です。私はマンチェスター・ユナイテッド戦(2019年3月10日)をスタジアムではなく、近くのスポーツバーで観戦しました。
下向きに傾斜した屋根はピッチへ入る光が最大限になるよう工夫されているそうで、スタジアムの頂点にある淵の部分は波型にすることでギャップを作り、風が通りやすいようにしており、雨水を集める役目も担っているそうです。
月に2度鳩防止のために鷹がスタンドのパトロールをおこなっていることを現地で知り、驚きました。スタジアム全体で合計900台のデジタルサイネージが使用されており、ホスピタリティボックスやコンコース内にあるデジタルメニューボードなどに活用されていました。
なお、2021年ラグビーリーグ・ワールドカップ※の男子準決勝の会場になっており、サッカー以外の競技で本スタジアムが使用されるのは初めてになるそうです。
※ラグビーリーグ(13人制)のナショナルチームによる国際大会
スタジアム内には
・1,000箇所以上のトイレ
・盲導犬用トイレ施設
・250台の車椅子スペース
・礼拝室が2部屋
などが用意されており、多様なニーズに応えるための配慮がされていました。
ゴール上部に設置されている時計盤には前スタジアム(ハイバリー)の象徴だった南時計を使用しています。賛否両論の意見があるそうですが...。
・ARSENAL PLATINUM MEMBERSHIP会員用のラウンジ
・AVENELL CLUB会員のみ利用可能なエグゼクティブボックス
など多数の特別な部屋があります。
上の写真はDIAMOND CLUB(ダイヤモンドクラブ)会員※のみ使用可能なVIPラウンジです。ツアーで見ることはできますが、入ることはできません。
※最上位のVIP会員。何年も先まで予約待ちが出ている状態で入会金も非公開
床が大理石でできている高級感溢れるラウンジにはバーやレストランが兼備されており、料理はミシュランガイド2つ星を獲得したシェフが作っているそうです。ラウンジから直接出ることのできるベランダにはクッション性のシートが用意されていました。
試合日以外に実施されている「アーセナル・スタジアム・ツアー※」は日本語も搭載されている多言語対応のオーディオガイドを手に、ルートに沿って自由に周ることができます。
※公式の購入ページから22ポンド(約3,200円)~購入可能
端末の仕様は❺スタンフォードブリッジ(チェルシーFC)で紹介した内容と似ており、各エリアごとの説明や歴史的なシーンの映像を表示してくれます。スタンフォードブリッジとの違いは「コンテンツ選択を自らのタイミングでおこなえる」という部分です。自分のタイミングでじっくり見たい、という私にはありがたかったです。
主要エリア全てにスタッフが配置されており、「写真撮影しましょうか?」とほぼ全員が声をかけてくれました。とても気さくで嬉しかったです。今回紹介する7つのスタジアムの中で最も好印象でした。フロントスタッフの対応良し悪しはスタジアム単位で二極化していました。
また、ツアー終了時に自分の名前を入れることのできる参加表彰紙を5ポンド(約700円)で購入することができます。購入者が多かった(私も買いました)ですが、A4サイズの荷物にはギリギリ入らない大きさだったので、いくつかサイズを選べる仕組みであればもっと購入率も上がるのではないかと感じました。
❼ウェンブリー・スタジアム(イギリス)
ウェンブリー・ナショナル・スタジアム・リミテッド(FAの子会社)が所有権を持つ90,000人収容のスタジアム。「サッカーの聖地」と称され、世界的に見ても数少ない開閉式スタジアムです。
イングランド代表の本拠地として使用されており、FAカップや代表戦で主に使われています。他にも音楽コンサート、ラグビーやアメフトなどのスポーツ大会の会場としても使われます。
スタジアム自体は1923年に開場(当時は多目的競技場)し、その後、2003年~2007年に総工費7億9,800万ポンド(約1,175億2,580万円)をかけた大改修がおこなわれ、欧州では2番目の収容人数を誇るサッカー専用スタジアムへと変貌を遂げました。
ロンドンの中心駅のKings Cross駅から地下鉄で20分のWembley Park駅から徒歩15分、Wembley Stadium駅から徒歩8分に位置しています。
周辺施設のレパートリーも豊富であり、特にスタジアムの目の前にあるBoxpark Wembleyは多種類の飲食店、Wi-Fi環境付きのフードコート、バー、大型モニターなどの設備があり、試合日はもちろん試合日以外でも多くの人で賑わっていました。
私が3月上旬にツアー参加のためにスタジアムに訪れた際はほぼ全部の周辺施設が工事中でした(笑)。
屋根のついたスタジアムでは"世界最大のキャパシティ"であるという特徴を生かした内観は開放感と臨場感を存分に兼ね備えており、下向きの傾斜はサポーターの声がよりスタジアム内に反響しやすいようにと、工夫されているそうです。
スタジアム内には
・161部屋のVIPルーム「Private Box」
・バー付きのVIPラウンジ
・モニター付きのクッション製のシート
など特別な部屋やエリアが種類豊富に備えられていました。
クラブスタッフいわく、特にPrivate Boxはかなりの収益性を誇っているとのこと。詳しい金額や契約内容については教えてませんでした。
「CLUB Wembley会員」に向けた待遇がとても良かったです。例えば、施設内のWi-Fiやバー、レストランなどは会員のみしか利用することができません。
また、身体が不自由な方向けのスペースはスタジアムの至る所に準備されていました。車椅子の方専用のシートエリアの数は他スタジアムに比べて多く、設置場所の通路も非常に広かったです。
試合日以外に1日3回実施されている「ウェンブリー・スタジアム・ツアー※」は動画観賞用のオーディオガイド(英語のみ)付きでクラブスタッフがスタジアム内を案内してくれます。
※公式の購入ページから20ポンド(約3,000円)~購入可能
私が参加した14:00~の時間帯には46人ものツアー参加者(うち、子どもが10人くらい)がいました。私が参加したことのあるスタジアムツアー(※時間指定に限る)の中では最多の参加人数でした。
今回紹介する7つのスタジアムの中で唯一、どこかのチームの本拠地ではないため、ホームチームのロッカールームやオフィシャルショップはイングランド代表仕様になっていました。
ツアー冒頭にメインスタンド2階から参加者全員で「Hello,Wembleyyyy!!」と叫ぶスタジアム内でのやまびこ体験をしました。"日本からやってきた学生"ということで案内をしてくれたクラブスタッフが指名をしてくれ、掛け声役をやらせてもらえたのが嬉しかったです(笑)。他スタジアムのツアーにはなかった取り組みだったので印象的でした。
他にもピッチ見学の際に、選手入場の際に実際に流される音楽を流してくれて選手気分でピッチ入場をさせてくれたり、と工夫がたくさんあり、楽しかったです。
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今回行った7つのスタジアムすべてで、試合観戦での満足感はもちろん、"試合以外の時間にスタジアムに行っても満足できる"仕組みが整っていました。
大学の友人は、サッカーに関して知識が全く無いながらも興味本位でカンプ・ノウ(バルセロナ)のスタジアムツアーに参加してみた結果、ツアー終了後に「感動した!!」と絶賛していました。ちなみに、その友人はピッチを上からしか見れないと思ってたらしく「実際に芝生のところまでいけたことが嬉しかった」と言っていました。
この記事でスタジアムの受け入れ態勢を知り、以前の私のように"知らないから怖い"という方が、少しでも海外のスタジアム・アリーナを訪れてくれたら嬉しいです。
※金額はすべて2019年3月上旬で換算
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