ドイツのサッカー、ブンデスリーガ(1部)のFCザンクトパウリは、本拠地スタジアム『ミラントア・シュタディオン』の管理会社の買収完了を受け、サッカー界では「通常とは異なる資金調達」が可能であることを証明した。
FCザンクトパウリが「サッカー界初の試み」と称したこのスキームは、2024年11月10日に発足された。『サッカー協同組合ザンクトパウリ2024(FCSP)』は、ファンやクラブ会員以外も受け入れており、株式は1株あたり850～950ユーロ(約15～17万円)。なお、これには32ユーロ(約6,000円)の管理手数料と68ユーロ(約1万2,000円)の積立金が含まれる。
株式の申し込みでは、開始後わずか3日間で1,300万ユーロ(約23億円)、1週間後には1,500万ユーロ(約27億円)が集まるという急速な動きがあったが、その後はやや鈍化したため、2025年1月8日には申し込み期間を2ヶ月間延長し、2025年3月末までとする発表に至った。
期間延長の発表当時に集まっていた資金は1,840万ユーロ(約33億円)だったが、2025年3月、クラブは、ファンとクラブ会員による株式取得金額が、ミラントアの共同所有権を確保するために必要な株式の過半数にあたる基準額2,000万ユーロ(約36億円)を突破したことを発表した。さらにその翌月には、期間終盤の活発な動きにより、株式取得金額が最終目標の3,000万ユーロ(約54億円)に迫ったことも報じられている。
2025年5月8日、FCザンクトパウリはプロジェクトの評価を完了し、次の最終的な数字を公表した。
・株式の申し込み数：3万4,328株
・株式取得金額：2,917万8,800ユーロ(約52億6,964万566円)
なお、これらの株主の中には、著名なFCバイエルン・ミュンヘンの名誉会長兼監査役会メンバーである、ウリ・ヘーネス氏も名を連ねている。
2025年11月6日、ミラントア・シュタディオンの管理会社である、ミラントア・シュタディオン・ベトリーブスゲゼルシャフト(Millerntor Stadion Betriebsgesellschaft = MSB）社の過半数の株式は、正式にFCSPのものとなった。スタジアム管理会社の買収は、クラブを支える人々によって今後もミラントアを所有・運営し続けるための、鍵となる重要なステップであったといえるだろう。
『サッカー協同組合ザンクトパウリ2024』の、アンドレアス・ボルヒャーディング理事会長は次のように述べた。
「我々は、協同組合への多大な支援と、今までとは異なるサッカーやビジネスの進め方に対する数々の賛同の声を、大変喜ばしく受け止めております。
組合が過半数の株式取得を無事完了し、ミラントア・シュタディオンの筆頭株主となれたことを非常に嬉しく思います」
また、FCザンクトパウリのコマーシャル・ディレクターであり、協同組合の監査役会メンバーのウィルケン・エンゲルブラハト氏は、「クラブは今や、自己資金を活用した重要な投資を行うことができる」と語った。今後の主要な投資先としては、クラブのトレーニング施設の拡張が挙げられている。
さらに、FCザンクトパウリのオーケ・ゲットリッヒ会長は、今回の協同組合によるスタジアム買収の本質的な意味について、以下のように言及した。
「我々は、通常とは異なるサッカーや資金調達が可能であることを示しました。
プロサッカー界においても、多くの人々が参加して負担を共有するような、協同的で持続可能なビジネスアプローチは可能なのです」
その政治的傾向や社会的スタンスにより、ドイツ国外にも幅広いファンをもつFCザンクトパウリは、1963年以来2万9,500人収容のミラントア・シュタディオンでプレーしている。スタジアムを運営するMSBとハンブルク当局は、2020年2月に新たな長期契約で合意しており、同クラブは創立200周年を同スタジアムで祝う可能性が高い。
※金額はすべて2025年12月上旬で換算
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元記事 - St. Pauli cooperative completes stadium takeover
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