ザンクトパウリの協同組合スキーム、当初目標に迫る資金調達に成功
ザンクトパウリの協同組合スキーム、当初目標に迫る資金調達に成功

ザンクトパウリの協同組合スキーム、当初目標に迫る資金調達に成功

  • twitter
  • facebook
  • bookmark
  • push
  • line
  • twitter
  • facebooks
  • bookup
  • push7
FCSPの理事たち(左からアンドレアス・ボルシェルディング氏、ミリアム・ヴォルフラム氏、トーマス・コリエン氏、クリストファー・ハイネマン氏)
FCSPの理事たち(左からアンドレアス・ボルシェルディング氏、ミリアム・ヴォルフラム氏、トーマス・コリエン氏、クリストファー・ハイネマン氏) (画像:St. Pauli)

ドイツのサッカー、ブンデスリーガ(1部)のFCザンクトパウリは、本拠地『ミラントア・シュタディオン』の共同所有権をファンやクラブ会員に販売する画期的な協同組合スキームにより、当初目標であった3,000万ユーロ(約49億円)に迫る資金を調達できたことを報告した。

FCザンクトパウリが世界サッカー界初の試みと称したこのプロジェクトは、2024年11月10日に発足した。『サッカー協同組合ザンクトパウリ2024(FCSP)』は、ファンやクラブ会員以外の人たちも受け入れており、株式は1株あたり850ユーロ(約13万8,000円)。なお、これには32ユーロ(約5,000円)の管理手数料と68ユーロ(約1万1,000円)の積立金が含まれる。

株式の申し込みは、開始後わずか3日間で1,300万ユーロ(約21億円)、1週間後には1,500万ユーロ(約24億円)が集まるという急速な動きがあったが、その後はやや鈍化したため、2025年1月8日、申し込み期間を2025年3月末まで2ヶ月間延長するという発表に至った。

期間延長の発表当時に集まっていた資金は1,840万ユーロ(約30億円)だったが、2025年3月、クラブは、ファンとクラブ会員による株式取得金額が、ミラントアの共同所有権を確保するために必要な株式の過半数にあたる、基準額2,000万ユーロ(約32億円)を突破したことを発表した。

申し込み期間は2025年3月31日午後11時59分(現地時間)に正式に終了し、FCザンクトパウリによれば、2万1,000人を大きく超える人々がFCSPの一員となり、総額2,700万ユーロ(約44億円)以上の株式が購入されたという。

発表された数字は暫定的なものだったが、最近になって関心が高まってきたことにより、クラブはこれに応える必要性が生じている。FCSPの総会は、未決済分の処理に加えすべての数字を見直さなければならないうえ、さらに次のステップに向けた準備もある。

具体的には、まずミラントアの株式の過半数の取得、そして、FCSPの次回プロジェクトへの参加や、必要に応じた他の組合員からの株式取得に関心のある人のための、待機リストの用意などである。

2025年5月上旬にFCSP総会は、FCバイエルン・ミュンヘン名誉会長のウリ・ヘーネス氏を含む組合員に、申し込み段階の最終結果と次段階についての説明をする予定だ。FCSPの第1回総会は2025年6月に予定されている。

FCザンクトパウリのオーケ・ゲットリッヒ会長は、FCSPによる資金調達の成功を受け、次のように述べた。

「地域社会の皆様からこれほど多くのご支援をいただき、驚きと感謝の気持ちでいっぱいです。FCザンクトパウリを心から応援してくれている皆様、そして私たちの歩みに共感してくれている皆様は今回、プロサッカー界においてこれまでとは異なる資金調達のやり方が可能であるということを、我々にはっきりと示してくれました」

また、FCザンクトパウリのコマーシャル・ディレクターであるウィルケン・エンゲルブラハト氏は次のように述べた。

「この協同組合は、FCザンクトパウリにとって新たな可能性を開くものです。スタジアムの株式の過半数を取得することで、クラブは予定よりはるかに早く財務負担を減らすことができ、その結果、新しいプロジェクトに投資できるようになるのです」

その政治的傾向や社会的スタンスにより、ドイツ国外にも幅広いファンをもつFCザンクトパウリは、1963年以来、2万9,500人収容のミラントア・シュタディオンでプレーしている。スタジアムを運営するミラントア・シュタディオン・ブートリーブス(Millerntorstadion Betriebs=MSB)社とハンブルク当局は、2020年2月に新たな長期契約で合意しており、同クラブは創立200周年を同スタジアムで祝う可能性が高い。

FCザンクトパウリの転換を受け、2025年1月、2.ブンデスリーガ(2部)のシャルケ04が、クラブの財務状況の強化と本拠地『フェルティンス・アレーナ』の経営権譲渡を最優先課題とする、協同組合プロジェクトを開始した。

さらに、2025年2月には、ブンデスリーガ(1部)のウニオン・ベルリンも、本拠地『シュタディオン・アン・デア・アルテン・フェルステライ』の改修を支援するために設立した持株会社『スタジオン・ベトリープスAG(Stadionbetriebs AG)』社の新株4万9,000株以上を売却したことが報じられた。

FCザンクトパウリは2023-24シーズン、2.ブンデスリーガ(2部)王者としてブンデスリーガ(1部)に復帰し、2025年4月末時点で、3節を残して降格圏まで勝ち点6差に迫っている。

同クラブのゲットリッヒ会長は、次のように述べた。

「今こそ今回の成功で得た勢いに乗って、次の目標に共に立ち向かえればと考えています。みんなで力を合わせていくことが、結果的にブンデスリーガ残留にも繋がるはずです」

その他の出来事として、FCザンクトパウリはスタジアムでFLINTA*(フリンタ)専用の入り口を提供する最初のクラブとなることを発表した。

『FLINTA*』はドイツで一般的に使われている用語で、女性、レズビアン、インターセックス、ノンバイナリー、トランスジェンダー、アジェンダーの人たちの頭文字をとったものだ。『*』はあらゆるジェンダー観を問わないことを強調しており、2025年4月6日に行われるブンデスリーガ(1部)のボルシア・メンヒェングラートバッハとのホームゲームでは、スタジアムに3か所のFLINTA*専用入口が追加される。

この試験運用はまず2024‐25シーズン終了まで実施され、その後はクラブが長期継続の可否を判断する。

FCザンクトパウリは以下のように声明を出している。

「ジェンダーに配慮した調整は、権限や特別な権利というわけではなく、むしろFLINTA*の人々が平等なスタジアム体験を得られるようにするために必要なステップであることを強調したいと考えています」

※金額はすべて2025年4月上旬で換算

Copyright: Xperiology/TheStadiumBusiness.com - reproduced with permission.
元記事 - St. Pauli buoyed by success of stadium cooperative

SBN-LOGO-rgb.png

THE STADIUM HUBの更新お知らせはこちらをフォロー
Twitter:@THESTADIUMHUB
Facebook:THE STADIUM HUB

  • line
  • twitter
  • facebooks
  • bookup
  • push7