
イングランドのサッカー、プレミアリーグ(1部)のマンチェスター・ユナイテッドFC(以下、「ユナイテッド」)は2025年3月11日、現在のホームスタジアムがあるオールド・トラフォード地区再開発計画の中核事業として、収容人数10万人の新スタジアムを建設することを正式に発表した。
また同時に、スタジアム周辺の建築設計業者に任命された建築グループのフォスター・アンド・パートナーズ(Foster + Partners)社によって、新スタジアムとその周辺エリアの最新のパース画像と縮尺模型も初公開された。
ユナイテッドによると、スタジアムを含む広範の再開発計画は、英国経済に年間73億ポンド(約1兆3,785億円)の波及効果をもたらす可能性があり、最大9万2,000人の新規雇用と1万7,000戸以上の新規住宅、そして年間観光客180万人増を見込めるとしている。
フォスター・アンド・パートナーズが公開した画像と模型は今後、より詳細な実現可能性に関する協議、設計、そして計画策定を行うためのガイドラインとしての役割を果たすことになる。


フォスター・アンド・パートナーズの創設者であるノーマン・フォスター会長によると、新スタジアムは傘状の構造物で囲まれており、電力と雨水の効率的な利用が可能だという。また、この傘状の構造物の中には、トラファルガー広場の2倍の広さをもつ公共広場も新設される。
フォスター会長は、新スタジアムについて次のように述べた。
「歩きやすくて公共交通機関のアクセスが良い上、自然にも恵まれている広大なエリアの中核となるのが、この新スタジアムです。未来の複合利用型都市の縮図として新たな成長の波を牽引し、やがてマンチェスター市民が誇れる世界的な観光地へと成長することになるでしょう」
新スタジアムの建設には5年ほどかかるとフォスター会長は述べており、さらに、建設費は20億ポンド(約3,780億円)を超える可能性があるとの報道もある。クラブは、プロジェクトの資金調達方法について明らかにしていない。
2024年9月、ユナイテッドは、再建されるスタジアムの姿を初めて公開した。当時、同クラブは、スタジアムを新設するか既存のものを改修するかを決めかねていた。
既存のスタジアムを改修すれば、収容人数は8万7,000人まで増えるはずだったが、同クラブは現在、新設する方向で計画を進めている。
ユナイテッドの共同オーナーであるジム・ラトクリフ氏は次のように述べた。
「今日は、再開発されるオールド・トラフォードの真ん中に世界最高峰のサッカースタジアムを創るという、信じられないほどエキサイティングな旅の始まりの日です。
現在のスタジアムは過去115年間にわたり、見事に我々へ恩恵を与えてきましたが、世界のスポーツ界最高峰の競技場には遅れをとっている状況です。新スタジアムは既存の敷地に隣接して建設することで、歴史ある本拠地からほんの数分の場所に、これまでのオールド・トラフォードの要素を継承しつつもファン体験を一変させる、真に最先端のスタジアムを創り上げることができるのです。
またこの新スタジアムは、オールド・トラフォード地区の社会的・経済的再生の起爆剤として、工事段階のみならず、スタジアム地区が完成した後も永続的に雇用と資本を生み出す基盤になるという、非常に重要な役割も担っています。
政府は、特にイングランド北部におけるインフラ投資を戦略的優先事項に据えており、我々は、地域のみならず国家的にも意義のあるプロジェクトで、その使命をサポートできることを誇りに思っています」


2024年9月、フォスター・アンド・パートナーズは、スタジアム地区の建築設計業者に任命された。当時ユナイテッドは、同社の業務範囲は既存スタジアム周辺のクラブ所有地に限定されると述べ、スタジアム自体は今回の業務の対象にならないことを強調していた。
同クラブは現在、スタジアムを新設することを決定しており、10万人を収容する新スタジアムの最初の公式デザインが発表されている。
2025年3月、ユナイテッドは、オールド・トラフォード再開発の選択肢を検討するためオールド・トラフォード再生タスクフォースを結成し、2012年ロンドンオリンピック招致委員会の委員長を務めたセバスチャン・コー氏、クラブの元キャプテンであるギャリー・ネビル氏、マンチェスター広域都市圏(グレーター・マンチェスター)のアンディ・バーナム市長らがメンバーとして参加した。
同タスクフォースは、最初の実現可能性調査を完了し、ユナイテッド、グレーター・マンチェスター合同行政機構(GMCA)、トラフォード行政区それぞれの執行機関に対し、オプションズレポート(様々な可能性を調査し、最良の選択を行なうのに役立つよう纏められた報告書)を提出したばかりだ。ユナイテッドが2024年11月に実施した調査によると、ファンの大半はオールド・トラフォードの再開発よりも、新スタジアムの建設を望んでいることがわかった。


ユナイテッドの最高経営責任者であるオマール・ベラダ氏は次のように述べた。
「クラブとしての長期目標は、この世界最高のスタジアムで世界最高のサッカーチームがプレーすることです。タスクフォースがオールド・トラフォードの未来のため、実現可能性調査に尽力してくれたことに感謝しています。
私たちは、何千人ものファンや地元住民の意見とともに、その調査結果を慎重に検討し、マンチェスター・ユナイテッドとその周辺地域にとって、新たなスタジアムを建設することが正しい選択であるとの結論に達しました。最終決定に向けて、ファンと地域住民の意見を継続的に反映できるよう、今後も更なる協議を進めてまいります」
2025年1月、ユナイテッドのオールド・トラフォード周辺地域再開発計画は、英国財務省による支援の対象となることが決定し、レイチェル・リーヴス財務大臣はこのプロジェクトを「政府の経済成長促進計画の輝かしい一例」として奨励した。クラブは新スタジアムを建設する意向を表明することで、政府の経済成長政策を支持する考えを示している。
ラトクリフ氏は以前から、新スタジアムの建設資金を公的資金で賄うことを訴えてきた。同氏は2024年2月にユナイテッドの少数株を取得し、北イングランドにもロンドンにあるウェンブリーのようなスタジアムを建設したいと語っている。
また、オールド・トラフォードは7万4,000人を収容するイングランド最大のクラブスタジアムであるにもかかわらず欧州選手権『UEFA EURO 2028』の開催地に選ばれず、代わりに市内のライバルであるマンチェスター・シティFCの本拠地『エティハド・スタジアム』が選ばれるなど、老朽化の影響を懸念する声は以前から挙がっていた。
オールド・トラフォードで最後にUEFAチャンピオンズリーグ決勝戦が開催されてから20年以上も経過しており、ラトクリフ氏は、新スタジアムができればマンチェスターに一流のイベントをより多く誘致することができると考えているようだ。
※金額はすべて2025年4月下旬で換算
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元記事 - Manchester United to build new 100,000-capacity stadium
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