【第6回】 隼は舞いおりた ~ アル・シャバブのモハマド・アル・ラジェフ理事インタビュー(前編)
【第6回】 隼は舞いおりた ~ アル・シャバブのモハマド・アル・ラジェフ理事インタビュー(前編)

【第6回】 隼は舞いおりた ~ アル・シャバブのモハマド・アル・ラジェフ理事インタビュー(前編)

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(取材と文、写真・筑紫直樹)

鋭い眼差しで若手選手たちのプレーを見つめるアル・ラジェフ氏
鋭い眼差しで若手選手たちのプレーを見つめるアル・ラジェフ氏 (画像:THE STADIUM HUB)

2025年2月8日(土)、東京・国立競技場で前年度のJ1・天皇杯王者(ヴィッセル神戸)とJ1準優勝クラブ(サンフレッチェ広島)によるFUJIFILM SUPER CUPが開催された。1994年に第1回が開催されて以来、今年で32回目を迎えるスーパーカップだが、2026年にJリーグが秋春制に移行されることに伴い、今後については現時点では未定だが、この日は大会記録となる5万3,343人が来場した。

スーパーカップに先立ち、午前10:15からU18 Jリーグ選抜と日本高校サッカー選抜の一戦がNEXT GENERATION MATCHとして開催されたが、メインスタンドには、鋭い視線でピッチ上の若き選手たちのプレーを追う1人のゲストの姿があった。今回、初来日したモハマド・アル・ラジェフ氏。サウジアラビアのサッカー、サウジプロリーグ(SPL=1部)の名門シャバブ・クラブ(以下、「アル・シャバブFC」)の理事だ。

アル・シャバブFCは、1947年に創立されたリヤド最古のスポーツクラブで、SPL(6度)、国王杯(4度)、そしてアジアカップウィナーズカップを優勝しているサウジアラビア屈指の名門で、本拠地のアル・シャバブ・スタジアム(収容人数1万2,500人)は、改修を経て2023年にリニューアルオープンしたばかりだ。

U-18年代の選手たちのプレーを分析するアル・ラジェフ氏
U-18年代の選手たちのプレーを分析するアル・ラジェフ氏 (画像:THE STADIUM HUB)

1月中旬にサウジアラビアのリヤドで開催された日・サウジ・ビジョン2030閣僚ラウンドテーブルに参加した株式会社ウフルがアル・シャバブFCとの協力覚書(MOC)を締結したこともあり、同クラブのアル・ラジェフ氏が若手選手の発掘や獲得も見据え、以前より注目していた日本サッカー界や経済界との関係構築を目的として東京にやってきた。

この日は試合が終了する午後まで、Jリーグ幹部やクラブ関係者、経済界の重鎮との会談といった多忙なスケジュールをこなしたアル・ラジェフ氏であったが、THE STADIUM HUBは試合終了後、都内のホテルで同氏との単独インタビューを敢行した。2027年AFCアジアカップと2034年FIFAワールドカップというサッカーの祭典の開催が決まっているサウジアラビアの現在と未来について語ってもらった。

Jリーグクラブ関係者との会談に臨むアル・ラジェフ氏
Jリーグクラブ関係者との会談に臨むアル・ラジェフ氏 (画像:THE STADIUM HUB)

―まず、アル・シャバブFCというクラブ、そしてチームが大事にしている哲学について教えていただけますか。

アル・ラジェフ氏:アル・シャバブFCは、1947年創立のスポーツクラブで、サウジアラビアで最も歴史あるクラブのひとつです。「シャバブ」というのは、アラビア語で「youth=若者」を意味し、クラブが若者の才能や回復力、野心を重視していることを反映しています。クラブの哲学は、規律や優れた技術、地域コミュニティとの関係構築に基づいており、国内外で活躍できることを目指しています。

―2027年AFCアジアカップと2034年FIFAワールドカップの開催国となったことは、アル・シャバブFCにどのような恩恵をもたらしてくれるものと考えていますか。

アル・ラジェフ氏:AFCアジアカップやFIFAワールドカップといった国際大会を開催することで、サウジアラビアのサッカー界には大きなスポットライトが当たります。当然、その延長で、アル・シャバブFCにもインフラ面の向上、スポーンサーシップやパートナーシップの機会増加、そして、海外からの注目といった恩恵をもたらします。

我々の選手たちも、今まで以上に高いレベルの試合を経験することになりますし、今後は外国の才能溢れる選手たちの獲得の機会も増えるでしょう。また、ワールドカップが開催されることで、クラブとしても、より草の根レベルの育成に注力し、サウジサッカーの将来を担う次世代の選手たちにインスピレーションを与えていきたいと考えています。

―2034年FIFAワールドカップの開催に向け、サウジアラビアにおけるスポーツビジネスの展望をお聞かせください。

アル・ラジェフ氏:サウジ政府が推進する『サウジ・ビジョン2030』*と2034年FIFAワールドカップをきっかけとして、サウジアラビアのスポーツ業界は過去にない成長の時代に突入しています。FIFAワールドカップは、ただ単に国際大会を開催するだけでなく、新スタジアムや練習場の建設といったスポーツインフラ開発、才能ある選手の発掘や育成、そして世界との交流を深めるグローバルエンゲージメントを促進する原動力にもなるのです。

今後、外国資本による投資、スポーツにおけるガバナンスの向上、草の根レベルのフットボール強化の大幅な前進などが予想され、2034年までにSPLのクラブは世界水準の経営を実現し、国内リーグも躍進することで、サウジアラビアのサッカーはピッチ内外で競争力を高めることができると考えています。

*『サウジ・ビジョン2030』は、2016年4月にサウジアラビア政府が発表した、石油依存型経済から脱却し、包括的発展を実現するための成長戦略(出典:JETRO 日本貿易振興機構)

―サウジアラビアの経済多様化戦略において、スポーツはどのように関わってくるとお考えですか。

アル・ラジェフ氏:スポーツには、サウジ・ビジョン2030の主要な柱のひとつとして、経済活性化と社会変革を推進する役目があります。スポーツ業界は、雇用を創出し、外国資本の投資の呼び水となり、観光産業を拡大する要因となっています。2027年AFCアジアカップや2034年FIFAワールドカップといった大規模イベントは、スタジアムからスマートシティまで多様なインフラ開発プロジェクトを生み出し、ホスピタリティ、交通、エンターテインメントといった産業を活性化します。最終的には、サウジアラビアを世界屈指のスポーツハブとし、サッカーやモータースポーツ、eスポーツなどの力で経済を多様化することで、オイル経済への依存から脱却することを目標としています。

ジェッダの新スタジアムのイメージ
ジェッダの新スタジアムのイメージ (画像:SAFF)

―交通インフラの整備という意味では、2024年12月から2025年1月にかけてリヤド・メトロが開通したことは、アル・シャバブFCにとって影響はありますか。

アル・ラジェフ氏:我々アル・シャバブFC、そしてリヤドのサッカー界にとって、リヤド・メトロの開業はまさにゲームチェンジャーになります。交通網の大幅な向上により、ファンやサポーターがスタジアムにアクセスしやすくなるため、観客動員数と交流頻度が全体的に増えます。

また、リヤド・メトロを使うことで、クラブのユースの選手やスタッフの移動が便利になるため、これまで以上に効率良く練習やスカウティングに専念できるでしょう。さらに、スタジアムに隣接する土地の開発やクラブ公式グッズの販売、交通事業者やホスピタリティサービス業者とのパートナーシップなど、新たなビジネスチャンスの道が拓けるでしょう。

後編はこちらから

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