(取材と文、写真・筑紫直樹)
こんにちは。編集部の筑紫です。
最近は西も東も色々な場所に出張してあらためて驚くのが、訪日観光客の方々の多さです。コロナ禍が一旦落ち着き、日本の魅力に触れたいと思うツーリストが大挙して日本にやってきてくれたと感謝している反面、実際は日本全土が「安価な観光地化」していることを思うと複雑な気持ちにもなります。
経済が弱体化すると、国民の消費行動だけでなく、未来を夢見る「ビジョン」さえも緊縮してしまうようで、日本各地でスタジアムやアリーナといった大規模スポーツ&エンターテインメント施設を整備する動きがあるたびに、「一部のスポーツファンのために貴重な税金を投入するとは何事か。税金は福祉や公共インフラの拡充に投じるべきだ」という突っ込みどころ満載の共産主義的「べき論」がSNSを中心に溢れかえる傾向にあります。
ただ、スタジアムやアリーナといった多くの人間が来場する集客施設は、試合の有無にかぎらず地域を繋ぎ、健康増進を促す福祉の場になりえるだけでなく、多種多様な年代やライフスタイルの市民の活動を支える公共インフラの役割も果たすという、そのポジティブな側面にも注目してほしいと筆者は常々感じていたわけですが、2024年はそんな杞憂を吹き飛ばすかの如く、新たなサッカースタジアムが広島、金沢、長崎に完成します。
そして、この3か所の新スタジアムの誕生により、長年にわたって陸上競技場をホームスタジアムとするクラブが大多数を占めていたJリーグの構図はその歴史上はじめて逆転し、半数以上のクラブが球技専用スタジアムを本拠地とすることになります。まさに2024年は日本のサッカースタジアムの大きな歴史的転換点といえるでしょう。
ちなみに、1993年のJリーグ開幕時点ですでに不均衡があったことを考えると、Jリーグではわずか30年で専用スタジアムを本拠地とするクラブが多数派になっており、この変遷の速度には驚かされるばかりです。
さて、この2024年完成の3スタジアムですが、まず先陣を切って、Jリーグ開幕目前の2月10日(土)にエディオンピースウイング広島、そして翌週18日(日)には金沢ゴーゴーカレースタジアムが杮(こけら)落しを迎えます。1998年にサンフレッチェ広島の社長(当時)に就任した久保允誉会長がその必要性を訴えたのが2000年、そして1999年に就任した秋葉市長(当時)がサッカースタジアム整備計画について言及したのが2003年。その後の候補地選定を巡る紆余曲折など、まさに激動の20年余を経て完成した日本屈指の「まちなかスタジアム」の記念すべき杮落しを取材しました。
嫁入り前のスタジアムにご挨拶
メディア受付が開場(午前10時)に先立つ翌朝8時から開始されることもあり、広島には前日入りしました。宿泊したスーパーホテル広島では、宿泊客に無料で自転車を貸し出しており、せっかくなので翌日の杮落し(スタジアム的には「嫁入り」)を控える新スタジアムまで行ってみることにしてみました。ホテルがある田中町からスタジアムがある中央公園までは、これまでは市電や循環バスの『えきまちループ(右回り)』で本通や紙屋町、県庁前まで行き、そこから徒歩で行っていましたが、自転車だと、走行禁止の公園や広場を除くと、比較的自由にスタジアム近辺までアクセスできるので、アウェーで来るファンやサポーターにとっても非常にありがたいサービスですね。
嫁入り前のエディオンピースウイング広島に繋がるペデストリアンデッキには、前日だというのに仕事帰りの人や家族連れが写真を撮りに来ており、あらためて現地での新スタジアムの注目度の高さを実感しました。スタジアム外周のアウターコンコースは広めに設置されており、のびのびと歩ける空間となっています。南側の一角には、現日本代表監督の森保一氏や選手として活躍した森﨑兄弟、久保竜彦氏など、サンフレッチェ広島の名だたるレジェンドたちの記念プレートが掲げられており、クラブの歩みと歴史を感じることができます。
かさばるスタグッズは前日にゲットがおススメ
当日は混むだろうと思い、前夜のうちにグッズショップでお土産用のプリントクッキーをゲット。昨年3月のエスコンフィールド北海道(グッズは広島と同じくファナティクス)でも同様のクッキーを購入したのですが、この仕事をしているとサッカークラブや球団、自治体、設計事務所、建設会社といった方々とハードのお話をすることも多いので、スタジアムクッキーは皆さんに喜んでいただける必須アイテムです。クラブや球団の商品は駅の土産物売り場でも見かけますが、やはりスタジアム x お菓子は日本独自のスタジアム文化として永続してほしいものですし、いずれはもみじ饅頭の製法でスタジアム饅頭を作ってほしいという淡い願望も抱いてしまいます。
他にも、クラブのエンブレムはもちろんのこと、なんとエディオンピースウイング広島のロゴマークも刻印されているスペシャルバージョンのナイキエアフォース1やスタジアムのパース画像を使ったフェイスタオル、クリアファイルなど、開業記念グッズが広々としたスペースに陳列されており、試合がない日も足を運んでみたいショップデザインになっています。
ショップの外では、翌日の本番に向けて進むリハーサルの音を聞きながら、「明日のチケットは取れなかったけど、せめて雰囲気だけでも」とスタジアムを楽しむ親子やファンもいて、いよいよ杮落しがすぐそこまで来ていることを実感させられます。
さすがに嫁入り前のスタジアムにいつまでも纏わりつくのは野暮というものです。お好み焼きを食べに、近くの長田屋に向かうことにしました。
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