ヴェネツィア市議会が『ボスコ・デロ・スポルト』プロジェクトへの公共投資を承認
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新スタジアム側から見た屋内アリーナ
新スタジアム側から見た屋内アリーナ (画像:Municipality of Venice)

ヴェネツィア市議会は、サッカーのセリエAでプレーするヴェネツィアFCの新たな本拠地となる1万6,000席のスタジアムと1万席の屋内アリーナ等を整備するスポーツ地区開発計画『ボスコ・デロ・スポルト(Bosco dello Sport=スポーツの森)』プロジェクトについて、2億8,350万ユーロ (約385億円) の公共投資を賛成多数で承認した。

市は2022年3月、総事業費3億3,380万ユーロ(約453億円)の『ボスコ・デロ・スポルト』プロジェクトをテッセラ地区で推進し、公募により地元企業の参加も促す計画と表明していた。同プロジェクトでは新スタジアムと屋内アリーナ以外に、ボスコ・デロ・スポルトとヴェネツィア・テッセラ空港を結ぶ道路網の整備、スポーツ地区内の商業化、景観整備、教育施設の整備なども実施される。

ボスコ・デロ・スポルトの経済的および財務的な持続可能性を実現するため、総事業費のうちの9,350万ユーロ(約127億円)がイタリア政府の国土復旧・強靭化計画(National Recovery and Resilience Plan=PNRR)から、そして1憶8,990万ユーロ(約258億円)がヴェネツィア市からスポーツ地区の多機能化事業に割り当てられる。

ヴェネツィアFCの新スタジアムの完成イメージ
ヴェネツィアFCの新スタジアムの完成イメージ (画像:Municipality of Venice)

ヴェネツィアFCと市は2018年7月にも同クラブの新たな本拠地を整備する計画を発表していたが、市は計画を全面的に見直し、約79ヘクタールの広大な緑地に持続可能でエコロジカルなスポーツ施設群を整備する方針に切り替えた。市はスタジアムと屋内アリーナが「緑地の中心部に建つ象徴的な存在になる」と期待しており、ミラノ・コルティナ冬季五輪・パラリンピックが開催される2026年までの完成、そして大会での使用を目指す。

2022年4月21日の市議会の本会議では、ボスコ・デロ・スポルトへの公共投資計画について議論され、ヴェネツィア市の未来を大きく進歩させるポテンシャルを評価する賛成派と公営住宅や安価な電源、公共交通や公共サービスの充実といった分野への投資の方が優先順位が高いとする反対派で意見が真っ二つに分かれた。

最終的にボスコ・デロ・スポルトへの公共投資計画は決議にかけられ、賛成21票と反対12票で可決。市が「プロスポーツやアマチュアスポーツ、教育、健康、社会文化的エンターテインメントの中心地となるワールドクラスかつ都市型の大規模多機能エリア」と位置付ける『クアドランテ・ディ・テッセラ』の構成プロジェクトとして組み込まれることが決まった。

屋内アリーナの完成イメージ
屋内アリーナの完成イメージ (画像:Municipality of Venice)

本会議では市議たちが賛否両論に分かれて激しく議論したが、地元ウェブメディアのVenezia Todayによると、ジョヴァンニ=アンドレア・マルティニ市議はボスコ・デロ・スポルトへの公共投資決定を次のように糾弾した。

「ヴェネツィア市が未来に向かって進歩するには、ボスコ・デロ・スポルトとは異なるプロジェクトが必要なのです。ボスコ・デロ・スポルトは何としてでも阻止しなくてはなりません」

また、ボスコ・デロ・スポルトの計画内容自体は支持するものの、公共投資による整備を疑問視しているセシリア・トノン市議は次のように話した。

「約80ヘクタールの広大な森林を造成することから、ボスコ・デロ・スポルトのプロジェクト自体は支持しますが、なぜ別目的の予算の余剰金で用途制限のない資金を活用した官民連携(PPP)案が資金調達スキームから除外されたのか理解できません。

また、既存施設のスタディオ・ピエル・ルイジ・ペンツォはその歴史、伝統、そして市民感情の面でも、今後もヴェネツィア市内に存続していく可能性が高い中、競合施設となる新スタジアムを整備する意義はどこにあるのでしょうか」

ヴェネツィアFCは現在、1913年に開場し、長い歴史を誇るスタディオ・ピエル・ルイジ・ペンツォを本拠地としているが、同スタジアムは水の都のスタジアムということもあって、ボートが主なアクセス手段となっていることで知られる。歴史的な施設のため、当然ことながら老朽化も進んでおり、クラブがセリエAに復帰した2021-22年シーズンには部分的な改修を必要とした。

だが、マッテオ・センノ市議は市内の既存施設では高品質のプロスポーツ興行は成り立たないと指摘し、次のように話した。

「反対派は今になって民間投資家の参加を要求していますが、過去にその方法でスタジアム整備は実現しませんでした。

それにヴェネツィア市内の既存施設は、プロスポーツ興行には相応しくありません。メストレ地区のスタディオ・フランチェスコ・バラッカはセリエC(3部)の試合すら開催できず、(屋内アリーナの)パラスポルト・ジュゼッペ・タリエルチオもバスケットボールのユーロリーグ開催基準を満たしていないのが現実です。スタディオ・ピエル・ルイジ・ペンツォもヴェネツィアFCと行政が協力して突貫工事で改修したからこそ、なんとかセリアAの試合を開催できているだけで、理想からは程遠い状態としか言いようがありません。さらに、直接および間接的な雇用機会の創出やアマチュアスポーツへの投資の必要性を考慮すると、公共投資による新スタジアムの整備が最適な選択肢なのです」

※金額はすべて2022年4月下旬で換算

Copyright: Xperiology/TheStadiumBusiness.com - reproduced with permission.
元記事 - VENICE GIVES GREEN LIGHT TO 'BOSCO DELLO SPORT' VENTURE

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