世界的な新型コロナウイルスの蔓延にあたり、様々な協力をするスタジアム・アリーナが増えてきています。
先日の事例に加え、新たな事例をご紹介します。
①スコシアバンク・アリーナ(カナダ、トロント)
バスケットボールの北米最高峰リーグNBAの王者トロント・ラプターズとアイスホッケーの北米最高峰ナショナル・ホッケー・リーグ(NHL)のトロント・メープルリーフスが本拠地として使用している『スコシアバンク・アリーナ』は、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が広がる中、医療やライフラインの最前線の従事者やその家族、そして地域のフードバンクに提供する食事を用意するため、厨房やコートフロアを活用した大規模食糧支援拠点に転用された。
これは、アリーナを所有するメープルリーフ・スポーツ&エンターテインメント(MLSE)社とラプターズ、メープルリーフスの2チーム、サッカーの北米最高峰メジャーリーグ・サッカー(MLS)のトロントFCなどのスポーツチームによる共同事業で、毎日10,000食の提供を目標にしている。
食糧拠点の運営にあたり、アリーナの創立パートナーであるスコシアバンク(Scotiabank)、その子会社のタンジェリン銀行(Tangerine Bank)、電気通信大手のベル・カナダ(Bell Canada)社、通信大手のロジャーズ・コミュニケーションズ(Rogers Communications)といった大企業がMLSEに協力することを申し出た。
MLSEのマイケル・フリースダール最高経営責任者(CEO)は、アリーナの活用について次のように話した。
「平時においては、スコシアバンク・アリーナは多くの人が集まり、スポーツチームの応援やコンサートなどのイベントをお楽しみいただく場所ですが、世界中がCOVID-19の感染拡大を食い止めるため対策を打っている中、当アリーナは多くの人が集まり、支援を一番必要としている地域コミュニティの皆様のためにお手伝いをする場所になりました。
今、私たちが経験してる世界的危機では、多くの異なるニーズが生まれており、私たちはこの現状を地域の皆様のお手伝いをするためにアリーナを使う絶好の機会だと考えました。この危機的な状況において最前線で働いているMLSE職員、寄付などを通じて活動資金の調達に協力してくれたチーム・トロント基金(Team Toronto Fund)やメープルリーフスOB会(Maple Leafs Alumni)、そしてコールセンター業務などの重要な作業にリソースを費やしてくれた協賛企業の皆様に心から感謝しております」
プロスポーツの中断期間中ということを逆手に取り、スコシアバンク・アリーナ内の調理施設やコートフロアではミールパックの盛り付けや梱包が行われ、調理や準備作業にはMLSEの専属シェフや飲食売店のスタッフ、他の部署の職員が参加するなど、同アリーナはトロント最大規模の食糧支援拠点として活用されている。
食品ロス問題に取り組むカナダのフードバンク『セカンド・ハーベスト(Harvest)』や市内の食品提供業者、スポンサー企業などが新鮮な食材をMLSEの担当チームに毎日届けており、この食材を使ってシェフたちが栄養バランスの取れた食事を作る。出来上がった食事は梱包され、週5日のペースで登録者に配達されている。
②セルハースト・パーク(イングランド、サウスロンドン)
イングランドのサッカー、プレミアリーグ(1部)のクリスタル・パレスFCは、慈善団体のシティ・ハーベスト・ロンドン(City Harvest London)やパレス・フォー・ライフ基金(Palace for Life Foundation)と提携し、サウスロンドンで困窮する住民や国民保健サービス(National Health Service=NHS)職員、その家族に食事を届けるプロジェクトを始めた。
クリスタル・パレスの本拠地『セルハースト・パーク』でクラブ所属シェフが調理し、クラブ職員が梱包した食事をシティ・ハーベストが集荷・配達するというもので、1週間に900食の提供を目指している。スタジアム内の調理チームは、常に衛生管理とソーシャル・ディスタンシングを意識して取り組むとしている。
梱包された食事は医療の最前線でCOVID-19と対峙しているNHS職員とその家族、外出が難しい高齢者や障害者、貧困で食事を購入できない家庭や住民、路上生活者に届けられる。食材や調理作業、梱包に必要な活動資金はすべてクリスタル・パレスと個人出資者が工面する。また、配達費はシティ・ハーベストがカバーする。
クラブは、COVID-19が収束するまでは、「可能なかぎり長期にわたって事業を続けていく」としている。
③マーリンズ・パーク(アメリカ合衆国、マイアミ)
野球の北米最高峰、メジャーリーグ・ベースボール(MLB)のマイアミ・マーリンズの本拠地『マーリンズ・パーク』では2020年4月29日から、毎週水曜日にドライブスルー方式の食糧配給を開始した。
これはマイアミ・マーリンズ基金(Miami Marlins Foundation)のホームベース食糧支援基金(Home Plate Meals Relief Fund)の取り組みの一環として、NPO団体のファームシェア(Farm Share)とのパートナーシップで始めたプロジェクトで、毎週水曜日の13時にボールパーク東側の特設ブースで約500組の家族を対象に新鮮な食事や保存食品が配給される。
また、マイアミ・マーリンズ基金は冷凍健康食品サプライヤーのパフォーマンス・キッチン(Performance Kitchen)社と提携し、市内のアラパッタ地区、リバティシティ地区、リトル・ハバナ地区、オーヴァータウン地区で食糧を必要としている家族に食品引き換えクーポンを配布する。こちらもホームベース食糧支援基金のプロジェクトのひとつで、パフォーマンス・キッチン商品を販売している小売店で引き換え可能なクーポンを1,700枚、地域の子供や高齢者、COVID-19感染拡大に影響を受けた家族などを対象に配布していく。
④アリアンツ・パーク(イングランド、ロンドン郊外)
イングランドのラグビー、プレミアシップ(1部)のサラセンズは、NHSの医療従事者やライフライン従事者、自己隔離で療養中の近隣住民に配布する食事を調理するため、本拠地『アリアンツ・パーク』の厨房を慈善団体のコンパッション・ロンドン(Compassion London)に提供することを決定した。プロジェクトの期間中はコンパッション・ロンドンが週7日、毎日9時間アリアンツ・パークの厨房を自由に利用できるようになる。
コンパッション・ロンドンは、拠点となるアリアンツ・パークの厨房で10,000食/日の用意を目指しており、調理後に梱包された食事はロンドン市内の12ヶ所の病院や食事を必要としている市民に配達される。シェフやキッチンアシスタント、配達の運転手などに100名以上がボランティアスタッフとして参加している。
また、サラセンズはクラブ所有の車両も貸し出しているほか、すでに複数の選手もボランティアスタッフを手伝うため、スタジアムでの作業に参加している。
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元記事 - COVID-19 VENUE NEWS: SCOTIABANK ARENA, SELHURST PARK AND MORE
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