スペインのサッカー、ラ・リーガ(1部)のバレンシアCFは、クラブの本拠地『エスタディオ・デ・メスタージャ』の売却について、2019年12月にADUメディテラネオ住宅協同組合(ADU Mediterráneo)との間で達した合意を撤回すると発表した。ADUメディテラネオが入金期限の2020年3月31日までに必要な資金を保証できなかったことが原因だ。
クラブとADUメディテラネオは、現時点で2019年の合意に基づく契約を履行する状況にないという共通認識の下、関係の即時解消に同意した。
昨年12月中旬時点では、ADUメディテラネオが3月31日までにクラブに対して契約金の支払いを保証し、2022年7月に1億1500万～1億2000万ユーロ(約137～143億円)の契約金を一括払いでクラブ指定の銀行口座に振り込むことで両者は合意していた。
当初の合意通りに譲渡が進んでいた場合、支払いと同時にスタジアムの受け渡しが完了し、ADUメディテラネオのマンション開発事業『レジデンシアル・アセクイア・デ・メスタージャ(Residencial Acequia de Mestalla)』が直後に着工する流れで、2025年には同スタジアム跡地に新たな住宅マンションが完成する予定だった。
バレンシアは現本拠地の売却金を原資に、建設工事が凍結中の新スタジアム『ヌエボ・メスタージャ(新メスタージャ)』の2022-23シーズン開幕までの完成を視野に入れていたが、今回の合意撤回を受け、今後は他の選択肢も精査していくと話した。一方、ADUメディテラネオもレジデンシアル・アセクイア・デ・メスタージャ事業の実現を諦めておらず、別の資金調達方法を模索するとしている
バレンシアCFのアニル・ムルティ会長は合意撤回について次のように話した。
「残念ながら、ADUメディテラネオ住宅協同組合から、クラブとの間で合意した売却条件を遵守することができないこと、そして、別の方法を模索したいとの打診がありました。そのため、昨年12月にお伝えした売却に関する合意は解消され、同時に本件に関する独占交渉権も消滅しました。
皆様に誤った期待を抱かせたくはありませんが、ADUメディテラネオは今後もバレンシアCFが設定するスタジアム売却費を調達できるよう、引き続き全力を尽くすとしております。とはいえ、クラブとしても、今回の関係解消により、新スタジアムの完成を実現するための方法をADUメディテラネオ以外の選択肢の中から探すこともできるようになったわけです。
新スタジアムのヌエボ・メスタージャはクラブだけでなく、バレンシア市にとっても発展の基礎となる重要な存在になります。今後は様々な選択肢を精査していくことになりますが、直近の12ヶ月間に行なってきた多くの準備作業は非常に有用であり、決して無駄にはなるものではありません。
ただ、新型コロナウイルス(COVID-19)が世界中で蔓延していることを受け、サッカークラブだけでなく社会全般が経済的に不安定な状況に直面しているのが現実です。
現在の大変な状況は社会で生活するすべての人々に影響を与えており、特にインフラ整備における投資事業には大きな打撃を与えると思われます。スペインだけでなく、世界全土を見渡しても、経済が平常運転に戻るのがいつのことになるのかまったく予測できません。ですが、私たちは経済の安定を待ち続けるわけにはいかないのも事実で、すぐに最善のオプションを見つけるために動き出していくつもりです」
バレンシアは1923年から収容人数55,000人のエスタディオ・デ・メスタージャを本拠地としているが、収容人数61,500人のヌエボ・メスタージャの建設計画は資金調達の遅れなどの理由で、世界でも類を見ないほどの長い期間を費やしている。2009年に躯体工事が凍結して以来、大きな進展がほとんどないことから、2018年にクラブは時計の針を進めるために、金融・会計サービス大手のデロイト(Deloitte)とパートナーシップ契約を結んだ。
※金額はすべて2020年3月下旬で換算
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元記事 - VALENCIA STADIUM DEAL FALLS THROUGH
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