編集者コラム第14回 ~二度と来ない特別な日『こけら落とし』の魅力を編集長自ら熱弁(後編)~
編集者コラム第14回 ~二度と来ない特別な日『こけら落とし』の魅力を編集長自ら熱弁(後編)~

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スタジアムのこけら落としイベントの魅力について、有川(THE STADIUM HUB編集長)が弊サイト編集長という肩書きを忘れ、長年のスタジアム愛好家として自ら語る今回のインタビュー。

後編では、グッズや記念品に込められたこけら落としイベントの価値や、ファンとしての熱い想いを語ります。
(聞き手:筑紫 直樹)

前編はこちらから

こけら落としグッズで一番大切なのは日付

―こけら落としマニアには非常に重要な「こけら落としグッズ」ですが、今回は売ってましたか?

有川:あ、今回はしっかりと作られていて、キーホルダーやTシャツ、ポーチなど5種類くらいありました。しかも、Tシャツやポーチに関しては、京都サンガのキットサプライヤーのPumaとのコラボグッズだったので、記念品でもありつつ普段使いもできるのが嬉しいところです。

―スタジアムのイメージのTシャツはカッコいいですね!こけら落としグッズで一番大事なのはスタジアムのデザインでしょうか。

有川:いえ、個人的な意見ですが、一番重要なのはこけら落としの日付が入ってることですね。やはり、こけら落としに来たっていうのはその日しかないので、グッズにも日付が入っていることがものすごく重要だと思います。

今回の戦利品。日付はこけら落としグッズの必須要素
今回の戦利品。日付はこけら落としグッズの必須要素(写真:Hisashi Arikawa/THE STADIUM HUB)

スタジアムの写真やデザインだけだと、いつでも買えるグッズのように見えてしまいますが、日付が入ることで開場を記念する特別な試合(すなわちOpening Match)に行ったことがわかるのかなと。

―なるほど。そういう意味では、今回のこけら落としグッズはその部分はクリアしてましたか。

有川:そうですね。ただ...定番のTシャツとかキーホルダーはカバーしていたのですが、個人的にはもうちょっとアイテム数が多くてもいいのかなとは思いました。

とはいえ、こういったこけら落としグッズをバリューがあるものとしてしっかり販売するのは、「スタジアムにはバリューがあるんだ」ということを、スタジアム側の人間が発信しているように見えるので、意外と重要なものなんじゃないかなと思います。

―な、なるほど。こけら落としグッズは公式のものだけだったんですか?

有川:それがですね、知人が見つけてくれたんですが、スタジアムから見て駅の反対側には亀岡の駅前商店街があるんです。そちらでですね、こけら落としの記念バッジを配っていたんです!これはデザインを見ればわかるのですが、ちゃんと日付が入ってます。やっぱり日付が重要なんですけど、こういう非売品のグッズにも、ものすごく価値があると思っています。

商店街でもらえた記念バッジはレアアイテム。チラシと交換できる
商店街でもらえた記念バッジはレアアイテム。チラシと交換できる(写真:Naoki Tsukushi/THE STADIUM HUB)

駅前で配っていたチラシが引換券となって、参加店舗にチラシを持っていくとバッジと交換してくれるというものだったんですが、駅の反対側の商店街の存在感を示すためにも、購入者にプレゼントというかたちでもよかったのかなと私は思いました。そのくらい価値があるものだと考えています。

ネーミングライツの見せ方で感じる京セラの奥ゆかしさ

―ポテンシャルでいっぱいですね。ちなみにネーミングライツ(命名権)は京セラですが、例えば京セラ・ファンゾーンとかそういったかたちのマーケティングのアクティベーションはありましたか?

有川:そういったアクティベーションは特に見受けられませんでしたね。今回、サンガスタジアムというクラブ名が付いたJリーグ初のスタジアムになったわけですが、京都+サンガ+京セラという関係性はJリーグファンの方ならすぐにわかるし、京都府民で京セラを知らない人はいないと思うんですね。

その文脈の中で、京セラがあえてすごく表立ってPRすることを控えているようにも見えたんですよ。

―はい。

有川:ですので、○○スタジアムではなく、「(supported または sponsored)by KYOCERA」という控えめな見せ方をあえてしているのかなと感じました。そこがなんというか、京セラの奥ゆかしさというか、自分たちが前面に出ないというスタンスを感じたんですよね。

クラブ名が付いたJ初のスタジアム
クラブ名が付いたJ初のスタジアム(写真:Hisashi Arikawa/THE STADIUM HUB)

見つめ直して欲しい、記念チケットの様々な価値

―今後も広島や今治など、新スタジアムが整備されていく予定ですが、今後のこけら落としではぜひ考えてほしいという要望はありますか?

有川:私はやっぱりチケットというモノがすごく重要だと思っています。さっきのグッズに日付が重要という話ではありませんが、こけら落としのチケットには当然その日付が入っています。

日本のスポーツのチケットは、電子チケットを除けば、コンビニで発券する方が多いと思うのですが、デフォルトの台紙に文字情報で印刷されるだけなので、非常に味気ないと思うんですよ。

―なるほど。

有川:ホームチームのエンブレムさえ入ってないですよね。その点はもうちょっと工夫のしがいがあるのかなっていうのと、あと今回、京都はなぜかやらなかったんですが、吹田スタジアムのこけら落としの時には、ガンバ大阪がオリジナルデザインの記念チケットをわざわざ準備して、しかも購入者の名前を入れてくれたんです。

―おおっ!

有川:吹田のこけら落としもPanasonic Cupという名古屋グランパス相手のプレシーズンマッチだったんですが、そういうことにバリューがあるんだということ理解している人が運営主体の中にいるのかどうかということも大きいのかなと。

京都でもVIPとか関係者にはそういうチケットを配っていたのかもしれませんが、私が知るかぎりでは一般販売では特別デザインのチケットはなかったですね。実は私はわざわざ特別チケットの可能性に賭けて郵送オプションを選んだのですが、普通のプレイガイドの台紙に印字したものが送られてきたので、これで郵送料数百円も取るのかぁ...と(涙)

やはりですね、こけら落としであるとか、新しいスタジアムがオープンするんだということに、興行側がどれだけ価値を感じているかというのは、私はそういうところに表れると思っていて。

チケットのデザインもそうですが、本当だったらお客さんが一番「おっ」と思うのは、スタジアムの小さな模型がこけら落とし来場者全員に配られるとか、そういうことだと思うんです。

―模型ですか!

有川:小さな模型でいいんです。ペーパークラフトだとちょっと弱い気がしますが、まあ、そういったスタジアム模型の裏側だったりサイドに京セラのロゴやサンガのスポンサー企業の社名、亀岡市の名前を入れて、来場者がこけら落としに行ったということをずっと一生憶えていられるようなモノが重要なのではないでしょうか。

模型が難しければ、スタジアムを模った何かを全員に配れば、今の時代はみんなそういうのを写真に撮って SNS に上げたりとかするわけです。

―あ、たしかに。

有川:ですので、チケットもおそらくコンビニのチケットだとスタジアムの前でわざわざ写真撮ろうとは思わないですけど、そこになんか「その日だけだな、これ」って思えるデザインが入ってると、スタジアムの背景の手前にチケットをかざして撮ったりするもんだと思います。

そういったものを「拡散したいな」とか「チケット自体をみんなに見せびらかしたいな」という心理ってあると思うんです。そういうところでも、結構チャンスをロスしている気がします。

基本的におらが街にスタジアムができるっていうのは、その街の人以外には関係ないという人が世の中の大多数だとは思うのですが、そういった世の多くの人たちも「あ、あの街に新しいスタジアムができたんだ」ということを認知してもらわないといけない。

そして、今の時代の認知というのは、SNSで色んな角度から、つまりサッカー好きな人たちだけじゃなくて、「模型が可愛い!」とか「お土産が可愛い!」とか「チケットがすっごい可愛い絵だった!!」みたいなことが結構ポイントになるんちゃうの?と思いましたね。

―たしかに紙チケットと比べ、電子チケットは記念品にはなりにくいかもしれませんね。

有川:まあ、電子チケット画面のスクショを撮っておいて、自分のスマホの中の思い出としては保存できるとは思いますが、ちょっとコレクタブルにはならないかなと。

―たしかに。海外スポーツの紙チケットは記念品としてのバリューも高いだけに残念な部分ではありますね。

有川:そうですよね。よくラグビーとかサッカーのワールドカップに観戦に行くと、帰り際に「使い終わったチケットを譲ってくれ」というコレクターの方が必ずいますよね。

日本の人はあまり価値を見出せないのか、結構そういうコレクターにタダで渡したりしてます。使用済みチケットが記念品であるかどうかは、個人の価値観によるところが大きいので、私も正直、映画の当日券とかはすぐに捨てちゃうので、そういったものに思い入れがあるかどうかですね。

ただ、17ヶ所のこけら落としチケットはすべて保管してあります。基本的にプレイガイドやコンビニの台紙にイベント情報が印字しただけのものが多いのですが、前述の吹田スタジアムや元旦の新国立のチケットは特別でした。

上から吹田、八戸、京都のこけら落としチケット
上から吹田、八戸、京都のこけら落としチケット(写真:Hisashi Arikawa/THE STADIUM HUB)

―う~ん、もったいない。

有川:チケッティングに関してはパートナー企業との契約上、色々な制約があるのかもしれませんが、ガンバ大阪のオリジナルデザインチケットは素晴らしいものでしたから、他のクラブでも何かできればいいですよね。

何もKリーグのようにリーグ戦の一般チケットまで立派なものにしろと言っているわけではなくて、こけら落としというスタジアムのお披露目という本当に特別な1日だけですから、この部分はまだ工夫のしがいがあるんじゃないかなと思いました。

あと、電子チケットにしても、こけら落としの場合は背景にスタジアムの透かしを入れるとか、逆にデジタルだからこそ簡単にできることもあるはずです。

―たしかに!

有川:これは別に私がスタジアムマニアだから言っているわけではなくて、普段プレシーズンマッチに5,000人くらいが来るとして、こけら落としに2万人や3万人が集まるのは、やはりスタジアムという新施設を見たいという人が大多数だからなんですね。

このスタジアムを見に来た人たちの心に残る体験こそが、またスタジアムに来たいというリピーター化への最初のフックになるはずです。

少なくとも、そういったフックになる一生に一度のチャンスがそこにはある。それをもっと活かす発想があっても良いのかなとは思います。

少し遠い...でも近づくに連れてワクワクするスタジアム

―今回のサンガスタジアムのこけら落としは総合的にはいかがでしたか?

有川:まず、サンガスタジアム自体が本当に素晴らしいスタジアムのひとつだと思います。まあチケットの話は本当に残念でしたけど、グッズもそれなりの数があったので、素敵なこけら落としだったと思います。

最寄り駅の目の前のスタジアムということで、アクセスに関しても問題はなかったのですが、やはり主要駅の京都駅からは電車で山を越えて30分と離れているので、駅近のスタジアムではあるけど街中のスタジアムではないなというのが総合的な印象です。

距離の感じ方、つまり30分が遠いか近いかというのは各人の捉え方次第なので確たることは言えませんが、アウェーサポが関西圏以外から訪れるとなると、この在来線の30分は長いと思うかもしれませんね。

ただ、非常に印象的だったのは、電車が亀岡駅に近づいてスタジアムが見えてきたときに、車両の中の結構な数の人が、「おお!すげぇー!」とか「めっちゃ近いやん!」とか「めっちゃカッコええわー!」とか思い思いに感動していたんで、そういう高揚感を持たせてくれるスタジアムなんだなと思いました。

そういう意味では、何も京都駅の目の前にスタジアムがなければいけないということではなくて、電車でスタジアムを目指す人たちに高揚感を与えることができるスポーツ施設だということが非常に大切なことだと思っています。

私はスタジアムに行く際は、自分の印象だけでなく、他の人たちのリアクションにも興味があるので色々な人に目が行くのですが、リアクションが少ない、つまりお客さんが考えていた通りで想定内のスタジアムの場合、こけら落としや内覧会が結構静かなものになりがちです。

この点でサンガスタジアムは電車の中の人たち、そしてスタジアムに入った時のお客さんのリアクションを見ても、驚きや感動に満ち溢れていました。

帰るときはすっかり晴れていた。また会う日まで...
帰るときはすっかり晴れていた。また会う日まで...(写真:Naoki Tsukushi/THE STADIUM HUB)

スタジアムという資産を最大限に活かす周辺施設作りを

―なるほど。感動するスタジアムというのは素敵ですね。亀岡駅のスタジアム側にはビジネスホテルや商業施設もオープンする予定だそうですが。

有川:スタジアムの近くに宿泊施設ができるのはいいですね。スタジアムの夜のライトアップがどのようになるのかはわかりませんが、試合前夜にスタジアム周辺を歩いてみたいですね。

あとは駅の反対側の商店街の美味しい食事処や飲み屋さんで前夜祭を楽しみたいので、そういった地元情報もどんどんアピールしてほしいなと思います。夜の飲食は現地宿泊の重要なポイントです。

スタジアムの夜と昼の顔を両方撮影できるということも重要で、インスタ映えというかSNSでバズるランドマークという意味では、例えばホテルや商業施設の屋上に、そこからしか撮れない構図のための展望デッキが整備されるとか、スタジアムという資産を最大限活かす工夫が欲しいですね。

いずれにせよ、サンガの試合チケットを持って宿泊した方にはスタジアムデザインの入った観戦証明書だったり、まあ可能であればスタジアムのミニ模型が宿泊特典として付いてきます、ということになれば、無理してでもそこに宿泊しますよ!

一生に一度の特別な1日をどうか存分に堪能してほしい

―あ、そういう記念品というか思い出もうれしいですね。有川さんが次回行かれるこけら落としは決まってるんですか?

有川:今年の上半期では、大阪の堺で3月29日に『くら寿司スタジアム堺』でオリックス2軍の試合がこけら落としで予定されています。ただ、こちらは規模も小さいので、グッズを売らないかもしれませんね。

その後は、5月6日に宇都宮の国体用陸上競技場がオープンし、J2の栃木SCのリーグ戦(vs大宮)がこけら落としとして開催される予定です。

―お話を伺って、こけら落としというのはただ単にオープニングマッチを観戦するだけでなく、様々な楽しみ方があるということを思い知らされました。

有川:しつこいようですが、こけら落としは本当「その1日」だけなんです。こけら落としが終わったら、スタジアムが大幅改修か立て直されないかぎり、別のこけら落としは来ないわけです。

ある意味、一生に一度の特別なイベントですので、その特別な1日を存分に堪能できるような楽しみ方を創出してほしいですし、それだけの価値があると思っています。

普通のビルは、主にテナントや管理者といった利用者のためだけの空間ですが、スタジアムはその街の人々や市外・県外、さらには国外からも様々な人が集まり、バラエティ豊富なコンテンツや飲食を楽しむことができる街のシンボルです。

そして、そんなおらが街の素晴らしいシンボルを存分に楽しめる特別な1日がこけら落としなのです。

―なんと深い...こけら落としのポテンシャルの深さに圧倒されました。今日は本当にありがとうございました!

有川:ありがとうございました。また、こけら落としで会いましょう!!

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