編集者コラム第14回 ~二度と来ない特別な日『こけら落とし』の魅力を編集長自ら熱弁(前編)~
編集者コラム第14回 ~二度と来ない特別な日『こけら落とし』の魅力を編集長自ら熱弁(前編)~

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サンガスタジアム外観
サンガスタジアム外観

2020年2月9日、日本に新たなスタジアムがオープンした。

京都府亀岡市のサンガスタジアム by KYOCERA(条例上では京都府立京都スタジアム)だ。

構想から25年、紆余曲折の末に我々の前に現れた光景は、紛れもなく日本中のサッカーファンが待ち望んでいた姿だった。西脇府知事の「現時点で日本最高のサッカースタジアム」という言葉に異を唱える人は少ないだろう。

2月9日はサンガスタジアムのこけら落としとして、今後は同スタジアムをホームスタジアムとして利用することになる京都サンガ(J2)とセレッソ大阪(J1)によるプレシーズンマッチが開催された。前売り券はJリーグチケット登録者向けの先行発売および一般発売共に発売初日に全席種が完売するなど、その関心の高さがメディアを賑わせた。

スタジアムのこけら落としはどのように特別なのか。そして、日本のスタジアムを取り巻く環境が改善されていく中、こけら落としイベントの質はどのように進化していくのか。THE STADIUM HUBの記念すべき第1回コラムでこけら落としの魅力について語った有川久志(THE STADIUM HUB編集長)に、とりあえず弊サイト編集長の肩書を横に置いてもらい、サンガスタジアムの特別な一日について話を聞いた。
(聞き手:筑紫 直樹)

長年、全国のこけら落としを巡ってきた生粋のスタジアムファン

―今回は「こんなスタジアムを訪れました」というスタジアムレポートとは毛色が違う、こけら落としという特殊な状況ということで、日本中のこけら落としに出没している有川さんにお話を聞ければと思います。

有川: なるほど。了解しました。

―まず、2月9日のサンガスタジアムは、有川さんにとって何ヶ所目のこけら落としになるのですか?

有川:Jリーグなどで使用するサッカー関連のスタジアムのこけら落としとしては17ヶ所目になります。これは、現在Jリーグに所属する56クラブの主要スタジアムを対象にカウントしています。

―今年の元旦の新国立も行かれてますよね?

有川:はい。古い順に、
1998/3/1:日産スタジアム(横浜)
2001/3/10:味の素スタジアム(調布)
2001/5/12:エコパスタジアム(静岡)
2001/5/19:カシマスタジアム※改修
2001/7/1:札幌ドーム
2001/8/4:豊田スタジアム(愛知)
2001/10/13:埼玉スタジアム
2001/11/24:ノエビアスタジアム(神戸)
2005/10/16:フクダ電子アリーナ(千葉)
2013/3/10:トランスコスモススタジアム(長崎)※改修
2015/3/22:長野Uスタジアム
2016/2/14:パナソニックスタジアム(吹田)
2016/10/2:ダイハツスタジアム(八戸)
2017/2/18:ミクニワールドスタジアム(北九州)
2017/9/10:ありがとうサービス.夢スタジアム(今治)
2020/1/1:新国立競技場(東京)
2020/2/9:サンガスタジアム(京都)
となります。

―近年だと球技専用スタジアムが多い感じですね。

有川:そうですね。札幌ドームが専スタかどうかはちょっと微妙ですが、初期の頃だと日産スやエコパなど、2002年日韓W杯の会場用に整備された大型陸上競技場が多かったのが、その後は日本にもずいぶん専スタが増えた印象があります。トラスタは陸上競技場ですが。

W杯開催に向けた2001年頃はバブルというか建築ラッシュで、日本でも次々とスタジアムが建てられた時期ですね。

―野球場とか、サッカーでは使わないスタジアムのこけら落としにも行くのですか?

有川:そうですね。例えば、ラグビー場では2019年のラグビーワールドカップ(RWC)用に大幅改修した熊谷や花園のこけら落としに行きました。新設スタジアムという意味では、釜石鵜住居復興スタジアムのこけら落としにも行きました。

あと野球だと、2018年に群馬県太田市の野球場の改修後のこけら落としに行きました。他には仙台の楽天生命パーク(2005)、新潟のHARD OFF ECOスタジアム(2009)、沖縄のセルラースタジアム那覇(2010)や広島のMAZDA Zoom-Zoomスタジアム(2009)にも行ってますが、広島はこけら落としが金曜日だったので会社を休んで行きました。

こけら落としはイベント前日から始まっている?

―今回のサンガスタジアムのこけら落としは当日に現地入りですか?

有川:いえ、週末だったこともあって前日に現地入りしました。前泊してこけら落としに備えました。

―ぜ、前泊ですか?

有川:やっぱり期待感が大きかったのもありますが、京都の街自体に色々見るべきところがあるということで、前日から現地入りして京都の街を夜だけでも楽しみたいなということと、翌日のこけら落としには何かトラブルがあっても必ず間に合うようにということですね。
基本的に私は関東近郊でなければ、こけら落としの際は必ず前泊してると思います。

―普通の試合と違って、間に合えばいいというものでもないんですね。

有川:もちろん何かのトラブルで遅れるのは嫌だなっていうのもあるんですけど、今回も早めに行ったことで記念グッズが確実にゲットできたり、早く会場に着くメリットはあります。

こけら落としというのは、スタジアムにとっても街にとっても、数十年に一度のことだと思うので、そのめったに来ないお祭りを楽しむという感覚なんですよね。

―なるほど。京都のこけら落としはキックオフが14時くらいでしたけど、どのくらい早くスタジアムに着いたんですか?

有川:まあ本来ならば3時間ぐらい前、11時くらいには着きたいものなんですが、実は京都スタジアムはこけら落としの2週間前にあった内覧会でスタジアムの中については把握してるということもあって、今回はキックオフ2時間前の12時過ぎぐらいに着きました。

―あ、では朝はホテルでゆっくりしたり、京都の街を観光したんですか?

有川:い、いや、それがですね、その日は京都でまだ行ったことがない野球場を探してですね...

―...え?

有川:京都大学の工学部のキャンパスが宇治にあるんですけど、その最寄り駅から歩いたところに黄檗公園野球場というのがあって、そこに行ってきました。

京都市内とか、その日のこけら落としに間に合うような場所の野球場とかサッカー場、例えばサンガの前のホームの西京極とかは行き尽くしていたので、まったく予定していなかったんですが、前日の夜にGoogleマップで探してみたら1ヶ所だけ見つかったので。

―限られた時間でもスタジアム訪問に使うんですね...

有川:今はGoogleマップとか便利なツールがあるので、ホテル→球場→駅→スタジアムの所要時間も事前にチェックしたのですが、実はひとつトラブルがありまして...

―ほう?

有川:道中で犬のう〇こを踏んじゃいまして...

―そ、それは災難でしたね...

有川:それで、犬のう〇こを靴から取り除くのに15分ぐらい時間を要してしまいまして...球場を見終わった後、一生懸命そのう〇こを落としていました。

―有川さんはこれまでに世界中で3,000ヶ所くらいのスタジアムやボールパークを訪れていると思うのですが、こういったトラブルはよくあるのですか?

有川:...実はまだ誰にも言ってなかったんですけど、これが面白いことに、2016年の吹田スタジアムのこけら落としの時にですね、写真を撮るのに焦っていたら、滑って足が泥に突っ込んじゃったんですよ。

ジーンズがもうすごい汚れて、吹田スタジアムの隣にあるグラウンドのトイレで、恥ずかしいことにパンイチ(パンツ一丁)でジーンズを洗ってたという...まあ、ちょっと変態おじさんみたいになっちゃいまして...

それを思い出してですね、「そうか、吹田の時はジーンズ汚れて、京都の時はう〇こを踏んだ」という、これは私なりの儀式なのではないかという風に思っちゃったわけです。

―それは関西の球技場あるあるということなのですか?

有川:いやいや、ないですよ!神戸ウィングスタジアムのこけら落としの時は、そういったトラブルは特になかったですから。

―そのような予測不能な苦難(?)を乗り越えてでも、やはりスタジアムには行く価値があるんですね!

有川:スタジアムに行く価値もあると思いますし、さらにこけら落としともなると、その街にとっても、そもそも1回しかないわけです。

こけら落としは2回も3回もあるものではないので、1回きりのその1日が終われば、スタジアム自体はこれからもそこに在り続けるわけですが、こけら落としはもう終わっちゃいます。そういう意味でも、こけら落としはやっぱり特別な1日なのかなと思います。

ふるさと納税の普及とスタジアム事業の新しい関係

―なるほど。先ほど、こけら落としの前に内覧会で京都スタジアムを見学済みとありましたが、これはどういった経緯で?

有川:ふるさと納税で京都府にある一定の寄付をすると、内覧会のご案内が来るというものがあったんです(現在は内覧会の特典は終了)。ハガキというか手紙のようなものが郵送されて、それが内覧会の入場券になります。

京都スタジアムは折角サッカー専用スタジアムで、今年開場するスタジアムとしては新国立と並んで最注目のスタジアムだったので、内覧会にもぜひ行ってみたいなと思って寄付しました。ふるさと納税というかたちなので、実際の負担額が少ないというのもいいですね。

―スタジアム整備事業とふるさと納税の連携というのはよくあることなのですか?

有川:ふるさと納税とスタジアム事業の連携はここ数年のことだと思います。私自身がふるさと納税のかたちでスタジアムに寄付したのは、現在改修中のセレッソ大阪の桜スタジアムが最初で、京都スタジアムは2回目になります。京都と同じタイミングで広島の新スタジアム整備事業にも寄付しました。

これはすごくいい制度だと思っていて、他にも福島のJヴィレッジに寄付するとグラウンドに隣接しているホテルの宿泊半額券がもらえたりとか、あとは幕張にできたJFA夢フィールドも1万円以上の寄付でプレートに名前が入ったりとかそういったものもあります。今から10年前の2010年には、甲子園球場の外床に敷き詰められてるレンガに名前が入るという寄付も募っていました。

2002年日韓W杯のスタジアムも寄付を募って芳名板を設置してあるはずですが、当時はまだふるさと納税がなかったので、このかたちでスタジアムに募金をする取り組みはここ数年のものだと思います。

地域ならではのスタグルはやはり素晴らしい

―自分の寄付がスタジアム整備に繋がるというのは素敵ですね。こけら落とし当日はスタジアムにはどのように行ったのですか?

有川:サンガスタジアムは亀岡市にあるので、まず市内からJR京都駅まで行って、そこから嵯峨野線の電車で亀岡駅まで行きました。所要時間は30分ほどですね。

京都駅の電光掲示板にも「こけら落とし」の説明が!
京都駅の電光掲示板にも「こけら落とし」の説明が!(写真:Hisashi Arikawa/THE STADIUM HUB)

―当日は寒かったのでは?

有川:そうですね。雪が降っていたので、これはとんでもない寒さの中での観戦になるのではと恐れました。今回のスタジアムは屋根がスタンドの最前列までカバーしているので、ある程度の安心感はあったのですが、やはり試合中の90分間は相当寒くなるのかなと思っていました。

亀岡駅は吹雪いていた...
亀岡駅は吹雪いていた...(写真:Naoki Tsukushi/THE STADIUM HUB)

―これまでも寒さの中でのこけら落としは経験されていたのですか?

有川:こけら落としのタイミングにもよるのですが、一番寒かったのは1998年の日産スタジアム(横浜国際総合競技場)ですね。大雪の次の日だったこともあり、当日の降雪はなかったものの、至るところに雪が積もっていて本当に寒かったですね。先日の京都よりも、98年の横浜の方が圧倒的に寒かったと記憶しています。

横浜ではお腹が空いていたので弁当買ってスタジアムの中に入ったのですが、いざ食べようと開けたら弁当が凍ってまして。

―うわぁ...

有川:生まれて初めて凍った弁当というものを見たのと同時に、「これ、お金出して買ったんだよな...」と愕然としましたよ。しかも食べようとしたら割り箸が折れたんですよ!

―固すぎ!

有川:固すぎたんで、放っておいたら溶けるかなと。でも溶けても美味しくないだろうなと思って、食べるのを断念しました。

―それに比べると京都の食事はいかがでしたか?

有川:亀岡駅を降りると、すでにキックオフ2時間前だったこともあり、多くの人がスタジアムに集まっていたんですが、スタジアムの前にあった『京都食べ尽くしフェス』というグルメゾーンというか屋台村がすごく素敵な作りで、京野菜の九条ネギや間人蟹(たいざがに)、京鴨肉など京都にちなんだスタジアムグルメがズラリと出店されていたので、これはなかなか素晴らしいなと思いました。

『京都食べ尽くしフェス』には京食材を使った屋台が集合
『京都食べ尽くしフェス』には京食材を使った屋台が集合(写真:Naoki Tsukushi/THE STADIUM HUB)

―凍ってなかったんですね。

有川:いやいや、凍ってないですよ(笑) ちゃんとその場で調理してくれて、ものすごく美味しかったです。

京都といえば、おばんざいや京料理のイメージが強かったのですが、亀岡牛や京都牛など、和食以外でも使える美味しそうな食材が結構あるなと思いました。あの京都尽くしのグルメゾーンは、すごく良いプレゼンテーションだったと思います。

私はカレーを食べたんですが、売り切れメニューが出るほど各店舗大行列だったにも関わらず、注文から受け渡しの店舗オペレーションは非常にスムーズで感心しました。

付帯施設がスタジアムの高揚感を上げる

―サンガスタジアムは付帯施設でも有名です。

有川:ちょうどNHKの大河ドラマ『麒麟がくる』が京都や亀岡を舞台にしているということで、スタジアム内に京都大河ドラマ館が特設会場として設置されています。さらに、その番組に関わるお土産品の販売店として、光秀大河物産館もあります。

スタジアム内の物産館の様子(画像:サンガスタジアム



 by KYOCERA)
スタジアム内の物産館の様子(画像:サンガスタジアム by KYOCERA)

―他にもクライミングジムがありますが、こちらはいかがでしたか?

有川:ものすごく本格的なクライミング施設で、私はスタジアム2階のアウターコンコースから覗いてみたのですが、高さもあって感心しました。あのようなスポーツの屋内施設がスタジアムの中にあるのは、高揚感も上がると思いました。

迫力ある高さのクライミングジム(画像:サンガスタジアム by KYOCERA)
迫力ある高さのクライミングジム(画像:サンガスタジアム by KYOCERA)

スタジアム、周辺駅の動線設計には課題が

―スタジアムの入退場はスムーズでしたか?

有川:いや、一部の入場ゲートを閉鎖したのか、もともと入場ゲート数が少ないのか、ちょっとマッチデーのオペレーションがどうなっているかはわからなかったのですが、入場にはものすごい長さの行列ができていました。

試合後も出口の数が少なくて、スタジアム退出に長い時間がかかりましたから、人流というか動線の設計には首を傾げる部分もありました。

―サンガスタジアム には内覧会では来られていたとのことですが、試合観戦は初めてだったわけですよね?

有川:そうです。今回はセレッソサポーターの皆さんが陣取るアウェーゴール裏に隣接するコーナーのバルコニー席で観戦したのですが、さすがに英国のように手を伸ばせば届きそうという距離感ではないものの、コーナーキックを蹴る音が間近に聞こえるような臨場感を感じられる素敵な席種で観戦しました。

このバルコニー席は、サンガスタジアムの特徴的な観戦エリアだと思いました。

セレッソピンクに染まるアウェー席
セレッソピンクに染まるアウェー席(写真:Naoki Tsukushi/THE STADIUM HUB)

あとは、ピッチに近いスタジアムということで、どこから見ても選手が近くに見えて、プレーが臨場感あるかたちで見られるという印象がありました。音については、陸上トラックがある日産スタジアムで観戦する横浜F・マリノスの試合などと比べると、歓声や音の反響というのは感じましたね。

ただ、これはあくまで個人的な感想なのですが、サンガスタジアムは日本の中では、屋根にしっかりとカバーされて音が籠るクローズドな素晴らしい観戦環境だと思ったのですが、応援スタイルの違いもあってか、イングランドのスタジアムに比べると、やや音が抜けてしまう感じは受けました。

ピッチが近く、臨場感あふれるサッカースタジアム
ピッチが近く、臨場感あふれるサッカースタジアム(写真:Naoki Tsukushi/THE STADIUM HUB)

―そうなんですね。ちなみにスタジアムの他の部分はいかがでしたか。

有川:メインスタンド以外はぐるっと廻ってみましたが、上層階の4角にガラス窓から綺麗に外の景色が見れるエリアがあるんです。亀岡の街はまだあまり開発されていないので、駅側の窓からは広い自然が目に入ってくる感じなんですが、街が開発されてくると今度は街の姿や人の暮らしも目に入ってきて面白いと思います。

逆にホームゴール裏側の窓からは、その日に雪が降っていたこともあり、雪景色の山を見ることができ、これは雰囲気があるなと思いました。

ガラス越しに外の景色を眺めることができるスタジアムは日本にはあまり多くないので、すごく計算されている空間演出だなと思いました。

スタジアムの外に広がる亀岡の牧歌的な風景
スタジアムの外に広がる亀岡の牧歌的な風景(写真:Naoki Tsukushi/THE STADIUM HUB)

―なるほど。ちなみに試合後の帰りの動線はどうでした。

有川:いや、帰りもゲートの数というか動線をかなり絞ってたと思います。事故こそ起こらなかったものの、大行列で相当な距離を歩くかたちで誘導されて、最終的には商店街側から亀岡駅に戻ってきました。

―懸念されていた駅の混雑状況はどうでしたか。

有川:JRが相当数の臨時列車を出していたのと、スタジアム側では亀岡駅の入場規制を実施していたことで、次々とお客さんを乗せた電車が出発していました。なのでプラットホームに人が溢れるようなことはなかったんですが、その入場規制によって駅のスタジアム側には長い行列ができて大変なことになっていました。

―今回はこけら落としということでしたが、昇格プレーオフや自動昇格や優勝が決まりそうな大事な試合でも大行列はできそうですね。

有川:そうですね。特にその重要な一戦がナイトゲームになると、ちょっと危険な動線なのかなとは思いました。

後編はこちらから

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