編集者コラム第13回 ~ スタジアムにこどもたちの声が響く レベルファイブスタジアムのバックヤードツアーに参加してみた ~
編集者コラム第13回 ~ スタジアムにこどもたちの声が響く レベルファイブスタジアムのバックヤードツアーに参加してみた ~

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レベルファイブスタジアム

こんにちは。海外ニュース担当の筑紫です。

旅先では、可能なかぎりその街のスタジアムを訪れるようにしています。出張だろうと旅行だろうと、スタジアム探訪は自分にとって大事な儀式となっています。

宿泊先から距離があれば1日1スタになりますが、もし近隣に複数のスタジアムがあれば、少なくとも1日2スタは見ておく。弊サイトの編集長との行脚では、1日3~5スタが当たり前になることもあります。

仕事で視察する場合は、クラブや運営会社のスタッフが時間を割いて施設を案内してくれ、大抵の情報は出してくれますが、旅行やアポなしで訪れる場合は公式ツアーに参加します。

案内してくれるのはクラブスタッフの場合もあるし、サポーター有志のボランティア、地域の方、さらには元選手など、スタジアムによって異なりますが、皆さん共通して『おらが街のおらがスタジアム』への誇りを熱く語ってくれます。その地域愛と喜びあふれる表情を見るのが大好きです。

例えば、ロンドンのクイーンズパーク・レンジャーズ(QPR)の本拠地のロフタス・ロードでは、子どもの頃からその地域で暮らしていて、結婚相手もQPRサポという兵(つわもの)の素敵なおばあちゃんが案内してくれました。在籍したほとんどの選手を息子や孫のように話してくれるその姿が、ある意味スタジアムそのものと同じくらい強く記憶に残っています。

スタジアムの公式ツアーはクラブや管理会社の運営で催行されるので、ほとんどのスタジアムを地方自治体が所有・運営管理する日本では、プロ野球の球場を除いて、公式ツアーはまだ多くないのが実情です。

もちろん、ふらりと訪れたスタジアムで出会ったスタッフの方が快く中に入れてくれたり、案内までしてくれることもあるし、そもそも日本の公共スポーツ施設は平日でも市民に解放されているので、比較的アクセスしやすいとはいえます。

ですが、公式ツアーならではの醍醐味というものは間違いなくあります。家族や友人と参加するのも楽しいし、別の街から来た他人同士で同じ楽しみを共有するのも、これまた心地よい旅の思い出になるでしょう。

欧米のスタジアムツアーに参加する観光客の出身地はバラバラで、新たな出会いもあったりします。

また、スタジアムが好きな人の中には、スタジアムグッズ(スタグッズ)を収集する猛者もいます。サッカーグッズなどには一切興味を示さず、スタグッズだけを追いかけるのだから手強いとしかいいようがありません。

さらにスタグッズは公式モノ、愛情モノ(パチモンというネガティブな意味ではなく、愛情が強すぎて作ってしまった非公式モノ)、こけら落とし限定モノ、そしてスタジアムツアー参加者限定モノなどのカテゴリに分類され、それぞれに根強いフォロワーがいます。

グッズの種類も小分類できるほど多種多様ですが、その辺はディープすぎるので別の機会に委ね、ここでは割愛することにします。

よく海外のスタジアムツアーでもらえる参加証
よく海外のスタジアムツアーでもらえる参加証

さて、前述のように、日本ではプロ野球の球場ツアーは人気を集めていますが、Jリーグのスタジアムツアーはまだまだ日常風景にはなっていません。

とはいえ、埼スタ(浦和)や吹田(ガンバ大阪)、カシマ(鹿島)、そして当コラムでも紹介した日産(横浜FM)などのスタジアムツアーの知名度は高くなりつつあるし、陸上競技場ではあるものの白波(鹿児島U)のツアーもサポーターイベントとしての人気は高いです。

そんな状況をどげんかせんといかんと憂えていたら、出張先の福岡でレベルファイブスタジアム(通称:レベスタ、正式名称:東平尾公園博多の森球技場)の公式ツアーが催行されていることを知りました。

そして、参加者限定グッズの存在に心を躍らせ、この度取材をさせていただくことになりました。収容人数20,061人の同スタジアムは、J2のアビスパ福岡やラグビーのトップリーグの試合が開催される九州屈指の球技専用スタジアムです。福岡生まれの血が騒ぎます。

7月中旬の土曜日。午前10時から開始された公式バックヤードツアーに合わせてレベルファイブスタジアムのメインエントランスに到着。降りしきる雨に若干の失望をおぼえつつも、これから始まるツアーのことを想像すると興奮します。

また、スタジアムというものは、雨の日しか見せない顔を持っているので、晴れの日とは異なる魅力があるものです。ツアーを催行するのは、同スタジアムの指定管理を担う「福岡市緑のまちづくり協会」の皆さん。上空の悪天候を吹き飛ばす満面の笑顔で迎えてくれました。

温かく迎えてくださった福岡市緑のまちづくり協会の(左から)松永さん、中尾さん、平田さん
温かく迎えてくださった福岡市緑のまちづくり協会の(左から)松永さん、中尾さん、平田さん
メインエントランス付近にはサッカーやラグビーの記念品が
メインエントランス付近にはサッカーやラグビーの記念品が

一緒にツアーに参加する市内在住のご家族も到着し、まずはレベルファイブスタジアムに関する映像を鑑賞するために、受付近くの大会議室のテーブル席に着席しようとすると、カラフルな物体が視野に入ってきました。なんと、いきなりきました!ツアー参加者限定のグッズです。

グッズセットの一つはスタンプラリーの台紙で、スタジアムの各所に設置されたスタンプを集めることで、スタンプラリー完遂者限定グッズを手にすることができるということです。これは最後まで油断できません。

すでに同行する少年たちとの負けられない戦いが始まっていることを悟りました。(別に完遂順位によって獲得グッズが変わるわけではありません)

なお、スタンプラリーの台紙は、スタジアムのネーミングライツ(命名権)を持つ福岡市のゲーム開発・販売会社、株式会社レベルファイブの代表作『イナズマイレブン』のデザインのものですが、これはこのバックヤードツアーのためだけに作られた専用のもの。

他にも、今年のビッグイベントであるラグビーW杯のクリアファイルや、J2アビスパ福岡のマスコットであるアビーちゃん&ビビーくんの博多弁を堪能できるオリジナルシール、そしてレベスタで敷設されている芝の「ペレニアル・ライグラス」の種が配られました。海外のツアーでは首から掛ける参加証しかもらえない場所が多いので、種類が多いのは嬉しいですね。

実はレベスタのバックヤードツアーは、2016年2月13日に開催された「親子で芝生教室&バックヤードツアー」というイベントを起源としており、芝生に関する学習部分はツアーの重要な要素になっています。今回は雨により、ピッチで学ぶ芝生教室は実施されなかったのですが、その分スタジアム自体で過ごす時間が長くなり、これはこれで嬉しかったです。

ツアー開始に配布された参加者限定グッズセット。スタンプラリー台紙(左上)はツアー用のオリジナルもの
ツアー開始に配布された参加者限定グッズセット。スタンプラリー台紙(左上)はツアー用のオリジナルもの

照明を暗くした大会議室ではレベスタに関する情報映像が流れ、主にサッカーとラグビーで使用される球技専用スタジアムであることが伝わってきます。マスコットも登場し、子どもにも見やすい映像になっています。

まずは映像で概要を紹介
まずは映像で概要を紹介

映像紹介が終わって諸室見学が始まるかと思いきや、まずピッチレベルに出てみる流れに。

雨が降りしきるピッチを眺めていると、おや、南側サイドスタンドのモニターが燦々と輝いています。「ああっ、あれは!」と心の中で叫ぶ筆者。嬉しいことに弊サイトの名前がモニターに掲示されているではありませんか!

ピッチレベルから見るバックスタンド。雨のせいか、ややおしとやかな印象
ピッチレベルから見るバックスタンド。雨のせいか、ややおしとやかな印象
サイドスタンドのモニターには弊サイトの名前が掲示されちょります!こげん嬉しかこたぁなかばい!
サイドスタンドのモニターには弊サイトの名前が掲示されちょります!こげん嬉しかこたぁなかばい!

感激した後は、いよいよ諸室の見学。医務室や本部役員室、ドーピングルーム、ロッカールームなど、まさにスタジアムツアーならではの時間と空間を体験できます。

ラグビーワールドカップに向けて改修されたばかりの施設は、新しくて清潔な雰囲気で、選手としても利用しやすそうな印象を受けます。また、説明を興味津々に聞いている子どもたちの姿を見ながら、やっぱりスタジアムって特別な場所だなぁと幸せな気持ちになりました。

医務室からもピッチが見える
医務室からもピッチが見える
要所要所に設置してあるスタンプ
要所要所に設置してあるスタンプ
ロッカールームはかなり広い
ロッカールームはかなり広い

1階の諸室を見学した後は、エレベーターで最上階の5階へ。以前はレストランだったという多目的ルームから眺めるピッチやスタンドは、ピッチレベルから見上げた時とはまた違った存在感を放っています。

案内をしてくださった真隅所長によると、多目的ルームはレストランとして再オープンできるか検討しているとのこと。欧米によくある、試合がない日も来れるレストランは魅力的な構想ですね。

広々とした最上階のラウンジスペース。以前あったレストランは復活なるか
広々とした最上階のラウンジスペース。以前あったレストランは復活なるか
いつの間にかスタンプ押しはお母さんの役目に。といいつつ、筆者も押してもらった
いつの間にかスタンプ押しはお母さんの役目に。といいつつ、筆者も押してもらった

次は記者席や実況席などのメディア施設へ。もちろん、子どもたちはスタンドの記者席ではまず座ってみる。そして、特別室や特別控室でも貴賓用の椅子に座ってみる。

自然と笑顔いっぱいになり、親御さんも嬉しそうにしています。こういった、通常の試合観戦時には体験できないコンテンツは本当に素晴らしいなと思います。

屋根に覆われた記者席
屋根に覆われた記者席
記者室付近で見つけた救助袋。経験者の平田さんによると、なかなかの速さで落ちるらしい...
記者室付近で見つけた救助袋。経験者の平田さんによると、なかなかの速さで落ちるらしい...
特別控室。奥には現在の天皇・皇后両陛下が1995年に来場された際の写真も
特別控室。奥には現在の天皇・皇后両陛下が1995年に来場された際の写真も
うむ、なかなか快適である
うむ、なかなか快適である
こちらは特別室。ここでも楽しい時間が流れる
こちらは特別室。ここでも楽しい時間が流れる

スタジアム内を歩いていると、各種サイネージなどを含め、子どもが好きそうなキャラクターを色々な場所で見かけることに気が付きました。そして、ここは子どもたちにとっては、特別で楽しい空間なんだろうなと感じました。

なにせ各フロアの移動中も、子どもたちの楽しそうな声が響き渡り、常に大人たちの顔にも笑みが絶えなかったからです。雨の静かな日でさえも、こんなに子どもたちが喜ぶ空間というものはそうそうありません。

子ども目線を大事にしたサイネージ
子ども目線を大事にしたサイネージ

そして、それを可能にしているのが、いつも優しい目で気にかけてくれているガイドさんたち。この日、子どもたちと筆者はスタンドや記者席でそれぞれ自由に走り回っていたが、ガイドさんたちが常に温かい目で見守ってくれていました。

そうして、親御さんたちも安心してスタジアムの魅力を堪能していたように思います。安心できるから、みんな楽しめる。スタジアム自体の魅力はあるものの、こうした幸せな時間や空気は、間違いなくガイドさんたちが作ってくれたものでした。

子どもたちを温かく見守るガイドさんたちの姿が印象的だった
子どもたちを温かく見守るガイドさんたちの姿が印象的だった

参加していたご家族のお兄ちゃんは、ツアー終盤は全速力で廊下を駆け抜けたり、スタンドの階段を昇降したり全力で楽しんでいます。

良識ある大人のふりをしつつ、実は一緒に走り回ってみたかった筆者も、次のツアー参加時は子どもを追いかけるふりをして自分も全力で走ってみようと思います。だってスタジアムはスポーツ施設なんだし。

1階の廊下を全力疾走するお兄ちゃん。これは今まで思いつかなかったが素晴らしい
1階の廊下を全力疾走するお兄ちゃん。これは今まで思いつかなかったが素晴らしい
スタンプラリーもいよいよ終盤に。別れのときは近い
スタンプラリーもいよいよ終盤に。別れのときは近い

スタンプの数も揃い、ツアーも終盤に差し掛かる中、一行はウォームアップルームに到着。ここで子どもたちはラグビーボールやサッカーボールを使い、文字通り思いっきり走り回って遊びました。ウォームアップルームに、そして観客のいない雨のスタジアムに子どもたちの歓喜の声が響き渡ります。

ウォームアップルームで思いっきりボール遊びする子どもたち
ウォームアップルームで思いっきりボール遊びする子どもたち

最近の日本では、「子どもたちの遊ぶ声がうるさいから、幼稚園を建てるな」といった苦情が増えて、子どもたちが肩身の狭い遊び方を強いられていると聞きますが、そんな息苦しい社会に、子どもたちが探究心と積極性を全面に出して、思いっきり叫んで楽しめる場所が増えるのは素晴らしいことだと思います。

この日、雨のスタジアムをあれほどまでに楽しんでいたあの子たちは、いつか思い出すでしょう。彼らが住むまちのスタジアムはでっかくて、楽しくて、優しく見守ってくれた大人たちの暖かさと愛情に満ち溢れた『特別な場所』だったということを。

さて、スタグッズの観点でいうと、忘れてはならないのが、スタンプラリー完遂者限定グッズの顛末ですが、これはネタバレにしてはいけないと思うようになりました。

やっぱり、子どもたちのドキドキワクワクを奪ってはいけない。ということで、大人も子どももぜひレベスタのバックヤードツアーで思いっきり叫んで、走り周ってスタンプ集めて楽しんでください!そして、その中に子どもを追いかけるふりして全力で走る大人がいても、温かい笑顔で見守ってあげてください!

最後に、案内をしてくださった平田さんにコメントをいただきました。

「バックヤードツアーを始めたきっかけは、芝生の話やレベスタのバックヤードを紹介することで、レベスタを好きになってもらったり、興味を持ってもらいたいと思ったからです。

子どもから大人まで、そしてスポーツをしている、していないに関係なく、誰にでも参加してもらいたいと思ってます。

参加者の客層としては、特にアビスパ福岡のサポーターの方が多いという印象はありませんが、アウェーサポーターや外国から来られた方は今のところいらっしゃっていませんね。

ツアーの形式は異なりますが、学校の社会見学や修学旅行、企業の視察なども受け入れていますよ!」

とのことなので、ぜひアウェーサポーターや外国の方も、レベスタのツアーに参加して、楽しい1日を過ごしてほしいと思います。

スタンドにかかる屋根が雄大なスタジアム
スタンドにかかる屋根が雄大なスタジアム
真隅所長(左)と筆者。この右の人は次回のツアーでは、全力疾走する予定
真隅所長(左)と筆者。この右の人は次回のツアーでは、全力疾走する予定

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