こんにちは。海外ニュース担当の筑紫です。
毎年、欧米や中東を舞台に、スタジアムやアリーナなどのベニュービジネスにフォーカスした国際サミットや会議イベントが開催されています。その中でも、特に欧州で無類の存在感を放っているのがスタジアムビジネス・サミット(TheStadiumBusiness Summit=SBS)です。
毎年、スタジアムビジネスに特化したSBSと、新設や改修事業の設計や建設にスポットライトを当てるスタジアムビジネス・設計&建設サミット(TheStadiumBusiness Design & Development Summit=SBDDS)が開催され、名実共に世界最大のスタジアムビジネスイベントとして知られています。
当サイトも昨年の設計&建設サミットと授賞式に参加し、世界のスタジアム事情に関する最新情報を知ることができました。
多岐にわたるスタジアムビジネスを多角的に評価・紹介しているSBSの中でも、今まさに大きな注目を集めているのがチケッティングといえます。開発→宣伝→予約→購入→入場または再販→エンゲージメントという流れのそれぞれの部分で電子化やキャッシュレス化、生体認証、セキュリティ、ブロックチェーン、統合化などのイノベーション導入が進んでおり、新技術やアイディアの熾烈な競争が活性化しています。
そのため、海外のスポーツやエンターテインメント業界では日々、新たなチケッティング方法が誕生しているといっても過言ではありません。
SBSを主催するのは、ロンドンのエクスペリオロジー(Xperiology)社。同社は、チケッティング業界で最先端をゆく欧米のキーパーソンが一堂に会する「チケッティングビジネス・フォーラム(TheTicketingBusiness Forum=TBF)」という会議イベントも開催しています。
ただ、両イベントとも欧州開催が恒例化しており、アジア市場へのアプローチに関しては未知数の部分も多かったのですが、今秋、エクスペリオロジーの主催でアジアで初めて「チケッティング・ビジネス・アジア(TheTicketingBusiness Asia 2019=TAS)」という新イベントが開催されることになりました。
10月16・17日の2日間にわたり香港で開催されるTAS2019について、エクスペリオロジーのイアン・ナトール創業者兼CEOに話を聞きました。
イアン・ナトール(Ian Nuttall)氏
チケッティングビジネス・フォーラム(TheTicketingBusiness Forum)のイベントオーナー兼創業者。また、ニュース配信サイト「TheTicketingBusiness.com」などのメディア運営やイベント主催者業務を行なうイベント&マーケティングエージェンシーのエクスペリオロジー社の創業者兼CEO。
F1や競馬、ウィンブルドン全英テニスなどのスポーツイベント運営に携わった後に、B2B向け雑誌出版で数々の業界賞を受賞。発電や産業プロセス、空港設計、高度道路交通システム(ITS)などの様々なB2B向け業界誌の発行編集者としても活躍。また、欧米のスポーツ業界で高く評価されているスタディア(Stadia)誌やTheStadiumBusiness.comといったメディア、そしてスタジアムビジネス・サミット(TheStadiumBusiness Summit)などのイベントも立ち上げた。
家庭と仕事の合間に、犬を連れてザ・ダウンズ(イギリス海峡近くの穏やかな停泊地)に散歩するのがかけがえのない時間。他にもバイクに乗ったり、山でハイキングするのが趣味。
(文と聞き手・筑紫直樹)
―まずお聞きしたいのは、エクスペリオロジーはどのような会社なのですか。
イアン:今年で創立10年目を迎えるエクスペリオロジーは、世界のスポーツ、レジャー、エンターテインメント業界に関する情報発信・データ提供を専門とするブティックエージェンシーです。
弊社では主に①SBSやTASのような会議イベントの企画開発と主催者業務、②ニュース配信および情報提供プラットフォームの発行業務、そして②スポーツ&エンターテインメント業界向けのデジタルマーケティングエージェンシー業務を主軸として活動しています。
欧州最大のチケッティングビジネス会議イベントであるチケッティングビジネス・フォーラム(TBF)やチケッティングビジネス賞といったイベントに加え、次のようなスポーツ&エンターテインメント業界向けの会議イベントも主催しています。
- スタジアムビジネス・サミット
(TheStadiumBusiness Summit) - スタジアムビジネス賞
(TheStadiumBusiness Awards) - スタジアムビジネス・設計&建設サミット
(TheStadiumBusiness Design & Development Summit) - スタジアムビジネス・設計&建設賞
(TheStadiumBusiness Design & Development Awards)
また、スポーツ&エンターテインメント業界向けの情報およびニュース配信サイトとして、次のようなウェブメディアも運営しています。
- TheTicketingBusiness.com&チケッティングビジネス・ニュース e-Newsletter
(週2回配信・登録読者数31,000人以上) - TheStadiumBusiness.com&スタジアムビジネス・ニュース e-Newsletter
(週2回配信・登録読者数17,000人以上)
詳細は弊社ウェブサイトでもご参照いただけます。
―世界のスタジアムビジネスの現況という意味では、欧州や米国の市場が重要視されていますがどう思われますか。
イアン:北米は間違いなく重要な市場ですが、私たちや弊社の顧客もスタジアムビジネスの世界的な成長を注 視しています。昨今は多くの国で世界トップレベルのスタジアムが建設されており、新しいプロジェクトほどデザインや設計、それにファン体験やカスタマーサービスの面で新たな領域へ進んでいると感じています。
新設スタジアムでは、ロンドン北部のトッテナム・ホットスパー・スタジアムが評判になっています。ファン体験を最優先事項として念頭に置いた設計や、可動式の天然芝ピッチの下にNFL仕様のフルサイズフィールドが整備されているなど、非常にユニークな仕様になっています。サッカー専用の大型スタジアムの新たなベンチマークとなったといえるでしょう。
―アジアの市場、特に中国や日本の動きはどうでしょう。
イアン:過去10年間、エクスペリオロジーは主に英国やEMEA(欧州、中東、アフリカ諸国)での事業に力を入れてきましたが、実は近年、アジアの国々におけるTheStadiumBusiness.comとTheTicketingBusiness.com の読者数が劇的に増えました。
このような背景もあり、アジアで新たなイベントとなる「チケッティングビジネス・アジア2019(Ticketing Business Asia 2019)」を開催することを決めました。10月16・17日の2日間、香港が舞台となります。アジアのスポーツ、エンターテインメント、アート業界のチケッティング専門家が一堂に会す素晴らしい機会になると考えています。
―日本におけるチケッティング市場についてはいかがでしょうか。
イアン:日本市場については、まだ分析を始めたばかりで詳しいことについては言及できませんが、決済やモバイルチケット、ファンやサポーター向けのアプリ開発の分野で多くのイノベーション事例が生まれているという印象があります。
―チケッティングビジネス・アジア2019の狙いを教えてください。
イアン:2013年に欧州で初めて開催されたTBF(TheTicketingBusiness Forum)は、スポーツやエンターテインメント業界のチケッティングに関するソリューションの開発や導入検討していたキーパーソンたちが、ハイレベルなネットワーキングや情報交換ができる唯一のイベントとして高く評価していただきました。現在、40ヶ国以上の国や地域から550人以上の参加者が集まるTBFは、おかげさまで世界トップクラスのチケッティングビジネス・イベントへと成長したと自負しています。
毎回、業界を代表する25人以上の専門家を講師として迎えるTBFでは、パフォーマンスアート、コンサート、映画、フェスティバルなどのエンターテインメント業界やスポーツ界のチケッティング業務に携わるキーパーソンたちが、必要な情報やコンタクトに出会えるプログラムを用意しています。
そして、私たちは今秋、このTBFの成功方程式(=会議イベント+コンテンツ × ネットワーキング)を、チケッティングビジネス・アジア2019としてアジアに持ってきます。アジアを代表するアート、アトラクション、スポーツ&エンターテインメント業界のチケッティング分野のキーパンソン、ビジネスリーダー、そしてディスラプターたちが初めて香港に集結するのです。
この歴史的なイベントで日本の皆様に会えることを心より楽しみにしています!
チケッティングこそがベニュービジネスの根幹 - このイアン氏のコメントは、8月14日に富山で発生したサッカー天皇杯の不手際を思い起こしても、非常にタイムリーかつ本質を突いた提言だと感じる方も多いのではないでしょうか。チケッティングは、観客とベニューまたはイベント自体とを結びつけるリンクでもあります。
富山の失敗事例は、日本の地方におけるスポーツ興行のプリミティブな部分を浮き彫りにしましたが、逆にこの状況を明確なビジネスチャンスと捉えている方もいることでしょう。人とイベントを結びつけるだけでなく、イベント体験そのものの一部にもなりえるチケッティングは、大きなポテンシャルを持っていると感じました。
チケッティング分野における『アジアの現在位置』にご興味ある方は、ぜひ10月のチケッティングビジネス・アジア2019をチェックしてみてください。
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