編集者コラム第6回~ゆくスタ くるスタ・西シドニー編~
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こんにちは。海外ニュース担当の筑紫です。

早いもので、もう年の瀬が近くなってきましたね。

毎日の忙しい「現在」が目まぐるしく「過去」へと変化し、そして蓄積されていく時間の流れは、私たちと共に年を重ねていくスタジアムやアリーナにも通じるところがあります。

世界中で最新鋭のスタジアムが建設されるラッシュの中で、時と共に忘却の彼方に追いやられたスタジアムは確かに存在し、街や都市を象徴する巨大建築物の代表格ともいえるスタジアムでさえも、そのような流れの中では、人の記憶の中にだけ生きる「かくも儚い存在」だったりもします。

スタジアムが存在しなかった地域に新設されるスタジアムは、喜びと歓迎に囲まれて産声を上げますが、以前は地域に愛されていたスタジアムが大規模改修やチーム移転等の理由により、いつのまにかこの世から消えていくのも世の常なのです。

2018年11月、オーストラリアのシドニー西部の街パラマタで整備されているウェスタンシドニー・スタジアム(2019年4月完成予定)が、13人制のリーグ式ラグビーのパラマタ・イールズとのテナント契約について基本合意に達したと報じられました。

記事:パラマタ・イールズ、ウェスタンシドニー・スタジアムを本拠地とすることに基本合意(THE STADIUM HUB)

ウェスタンシドニー・スタジアム(サッカー興行時)の完成予想図
ウェスタンシドニー・スタジアム(サッカー興行時)の完成予想図 (画像:InfrastructureNSW)

サッカー興行時
サッカー興行時 (画像:InfrastructureNSW)

リーグ式ラグビー興行時
リーグ式ラグビー興行時 (画像:InfrastructureNSW)

実はこのウェスタンシドニー・スタジアム、建て替え前は「オーストラリア初の球技専用スタジアム」のパラマタ・スタジアムとして1986年の開場時より、多くの西シドニーっ子たちに愛されてきました。

前述のイールスが最大のテナントではありましたが、プロサッカーリーグであるAリーグのウェスタンシドニー・ワンダラーズ(2012年創立)が新規参入してからは、同クラブの本拠地としても、サポーターたちの熱狂的な声援の中、ワンダラーズのリーグ優勝やACL制覇などの舞台として親しまれてきました。

また、ACLで対戦した川崎や広島(共に2014年)、鹿島(2015年)など日本のJリーグ勢にとっても思い出深いスタジアムではないでしょうか。
※パラマタ・スタジアムは2017年に解体されたため、同年のACLで対戦した浦和戦は、代替ホームのキャンベルタウン・スタジアムで開催されたため含まれず

建て替えの理由は既存施設の老朽化に伴うアップグレードと、より高い収益性を確保するための最新設備導入という至極合理的なものでした。

建て替え計画がちらほらと聞こえ始めた2015年2月、当時オーストラリア東海岸のスタジアムを調査していた私の最後の視察対象がパラマタ・スタジアムでした。2019年4月の完成が近づくにつれ、旧パラマタ・スタジアムの記憶が鮮明に蘇ります。

パラマタ・スタジアム(2015年2月当時)のバックスタンド
パラマタ・スタジアム(2015年2月当時)のバックスタンド (画像:The Good Bankers Co., Ltd/Naoki Tsukushi)

視察に訪れた日はノンマッチデーということもあり、清掃や座席のメンテナンスが行なわれているものの、静かでガランとしていたのを覚えています。

視察日はノンマッチデーで、ピッチのメンテ中
視察日はノンマッチデーで、ピッチのメンテ中 (画像:The Good Bankers Co., Ltd/Naoki Tsukushi)

特徴的だったのがメインとバックの両スタンドに架かる大きな屋根とゼロタッチの観客席。この辺は宗主国であるイングランドの影響を受けているのかもしれません。案内をしてくれた職員の方がおもむろに「屋根に昇ってみる?」と仰天オファーをしてくれたので、メンテナンス用の小さな梯子を上り、屋根に上がってみました。

そこから見下ろすピッチやスタジアムの奥に広がるシドニー西部の景色は、今までとはまったく違ったものでした。手も靴も乾燥した鳥の糞だらけになりましたが、なかなかない機会なので、まったく気にならなかったことを憶えています。

屋根の上から見たパラマタ・スタジアム。公園内にあり、緑に囲まれている
屋根の上から見たパラマタ・スタジアム。公園内にあり、緑に囲まれている (画像:The Good Bankers Co., Ltd/Naoki Tsukushi)

私にとって、新たなウェスタンシドニー・スタジアムとの出会いは、旧パラマタ・スタジアムとの惜別の瞬間であり、喜びと一抹の寂しさを伴った複雑な瞬間となることでしょう。とはいえ、世界中でこのようなスタジアムとの出会いと別れが繰り返され、それが地域や競技の伝統・歴史として紡がれていくのも、また事実です。

世界有数のスポーツ大国・オーストラリアが誇った同国初の球技専用スタジアムである「パラマタ・スタジアム」。今はもうない、そのスタジアムのことを私は忘れません。

と、ちょっと感傷的に書いてみたものの、実はこの話、別の角度から見ると非常にハッピーな船出でもあるのです。調査に協力してくれた豪州の球技専用スタジアムの運営管理者たちは、「球技専用スタジアム管理者会議(その名も「Rectangular Stadium Committee」)」なる会合を、定期的に毎回場所を変えながら開催していました。

この会合は、各スタジアムの諸問題や解決方法を共有し合うことで、次に改修・新設されるスタジアムが確実に向上する(つまり、同じ失敗の轍を踏まない)ことを目指しており、この会合を繰り返すことで知見が蓄積されていくわけですが、その最新の完成形こそが、今回ご紹介するウェスタンシドニー・スタジアムということになります。そういう意味では、豪州のスタジアム運営管理者たちの熱い思いが詰まったスタジアムといえるでしょう。

ちなみに次に待っているのは、シドニー東部のシドニー・フットボール・スタジアムの建て替えなので、こちらにも注目です。

2022年竣工予定のシドニー・フットボール・スタジアムの完成予想図
2022年竣工予定のシドニー・フットボール・スタジアムの完成予想図(画像:Sydney Cricket & Sports Ground Trust)

皆様が、大好きなスタジアムと良いお年をお迎えできますように。


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