【前編】(株)ミッションスポーツ満田哲彦氏 インタビュー ~2020のあとも人が集まるスタジアムを創造しよう~
【前編】(株)ミッションスポーツ満田哲彦氏 インタビュー ~2020のあとも人が集まるスタジアムを創造しよう~

【前編】(株)ミッションスポーツ満田哲彦氏 インタビュー ~2020のあとも人が集まるスタジアムを創造しよう~

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スタジアム・アリーナビジネスのキーマンに話を聞く有川編集長の直撃企画、今回は株式会社電通で東京オリンピック・パラリンピック室 営業推進部長などをつとめ、2017年に株式会社ミッションスポーツを創業した満田哲彦 代表取締役CEOにお話を伺います。

前編では、満田氏の経歴を伺う中で見えてきた「日本と海外のスポーツビジネスの差」についてお伝えします!
(聞き手・有川久志 編集・夏目幸明)

株式会社ミッションスポーツ
スポーツイノベーション(ニュースポンサーシップ、ニューコンテンツ)、スポーツ転職、#SportsValley(スポーツバレー)を事業領域とする。
ホームページ:https://mission-s.jp/

株式会社ミッションスポーツ 代表取締役CEO 満田哲彦氏
株式会社ミッションスポーツ 代表取締役CEO 満田哲彦氏

自治体と仕事をするなら"腹がくくれる"地元のキーマンを探そう

― 国内外のスポーツビジネスの現場を知り尽くしている満田さんには、リアルな経験談を伺いたいですね。まずはそのユニークなキャリアから...

満田:電通から日本サッカー協会への出向、FCバルセロナの国際部への留学を経験し、その後、電通が出資するシンガポールのスポーツ関連企業で副社長をつとめました。

起業する前は、東京オリンピック・パラリンピック室 営業推進部長として自治体やパラリンピック・障がい者スポーツの活性化などをミッションとした部をまとめていました。

振り返ると、おもにスポーツの団体・選手と企業やスポンサー、メディアや自治体を結び付けて価値を生み出す仕事が多かったと思います。

― 電通でも、出向や留学もふくめ、ここまで多岐にわたるスポーツビジネスの経験をお持ちの方は少ない。

満田: 電通からスポーツ団体に出向することはあっても、電通にいながら、FCバルセロナや日本サッカー協会にもいた、というキャリアは僕だけだと思います。

― 自治体関連業務は、他にない特徴がありそうですね。

満田: 難しいのは2年から4年ぐらいで担当の方に人事異動があることです。我々は東京オリンピック以降のレガシーのプランも含めて実行したいが、自治体の担当者は"考えはわかるけど次の担当者に任せざるを得ません"と対応するしかない場合が多いんです。結果的には好評で、十数の自治体と契約を結ぶことができましたが......。

― 人事以外にも、難しさってありますか?

満田: 皆さん、人柄もよく熱心なのですが、「実際に腹をくくって内外を仕切る覚悟があるか」が重要。地元の方にプロデューサーとして立っていただく場合、腹をくくれるキーマンが必要になります。

スタジアムも、様々なステークホルダーはいますが、基本的には自治体の持ち物である場合が多い。自治体の中に、地元でプロデューサー的な役割を果たす方がいないと、伝言ゲームで終わっちゃうのかな、と。

― 受ける側に推進する意思がないと動かない、ということですね?

満田: ええ。地元に根を生やしてる方が、一番、当事者意識が強いはず。僕らは、ノウハウや事例、アイデア、関連企業の紹介はサポートできますが、これを腹をくくって実行していただく方が重要なんです。

先日も九州の自治体で同じ話をしました。地元で優秀な方はいるので、そういう方が継続的に関与できる仕組みを作るのも大事かと思います。

― 新聞記事にもなったのですが、私が所属するウフルはNECさんと組んで、和歌山県の白浜町でワークとバケーションを組み合わせた"ワーケーション"という取り組みを行っています。このプロジェクトも、白浜町に一人キーマンがいらっしゃって、その方の情熱と推進力、当事者意識が重要だったと聞きました。

左から有川 編集長、満田 代表取締役CEO
左から有川 編集長、満田 代表取締役CEO

日本のスタジアムビジネスの今後は「ハブ」にあり!?

― さかのぼりますが、オリンピック関連の部署の前、サッカー協会に出向していましたね。そこでは、どのような業務を?

満田: マーケティング部でした。日本サッカー協会は何百、何千もの大会を主催していて、スポンサーがついていない国内事業も数多くあります。その中に女子やフットサル、少年少女育成、シニアの大会など国内事業がたくさんあり、スポンサーに協力してもらいつつ育成強化や普及を行っていました。

― ちなみに、日本サッカー協会はどのような雰囲気ですか?

満田: 最初は内部の仕組み、公益法人独特の仕事の進め方がわからなかったので、1か月ほど戸惑いました。その後、社会的意義や、日本サッカーに貢献できる事業であればいろんなことが仕掛けられる面白い所だな、とわかってきたのです。

当時、ちょうど東日本震災後だったのでスポンサーやFIFAの協力があり、各県にフットボールセンターを作るお手伝いや、岩手・宮城・福島で「キリンスマイルフィールド」という、全小学校を回るプロジェクトを行っていました。サッカーの力、企業の力、選手の力、協会の力を集め、地域の子どもたちを元気づける、やりがいがある仕事でした。

― さらに遡って、シンガポールでは?

満田: 2010年から2年、AFCやゴルフツアーの権利元の(電通が出資した)ワールドスポーツグループに出向しました。ここでは、サッカーとゴルフのテコ入れを行う、スポンサーシップセールスの責任者(VP)をつとめました。

― 日本とシンガポールのスポーツビジネス、違いはありましたか?

満田: 日本ではある程度、人的コネクションで仕事をとってこれることがあったんですが、現地企業は、露出量、ブランディング、動員数、視聴率などデータでの説明の重要性がより強い気がします。

― シンガポールには「スポーツハブ」などの素晴らしい施設がありますよね。

満田: ええ。現地でチームと一緒に、スポンサーセールスや事業計画作成などをおこなっていました。シンガポールの場合、国の関連企業が重要で、それと外資をどう組み合わせるかがポイントでした。

― シンガポールには、ナショナルスタジアム=シンガポールハブとか、最近注目されているタンピネスハブとかがあります。「ハブ」というネーミングをつけるのは、シンガポール流なんでしょうか?

満田: そうかもしれません。シンガポールの特徴は、国自体がビジネスセンスがあることです。他の産業でも優秀な人材が来るように、税金を安くしたり、年金制度も優遇するなど、凄まじいまでに人とコンテンツを呼び込む柔軟性を持っています。元々小さい国で資源がないから、ハブ機能を果たそうとするのでしょう。

実際、中国、東南アジア、オセアニア、日本への物流の拠点(ハブ)になっていて、規制緩和してビジネスが流通する仕組みがあります。そして、これをビジネスエリートが集まる国や金融が仕切っています。その中で「スポーツをどう活性化しようか?」とやってるので、国が民間企業以上に民間的な部分があるんです。

あと、人口が少なく―リオオリンピックでは、水泳で初の金メダリストが出ましたが―国内競技が強くない。ゆえに海外のスポーツイベントをシンガポールに呼び込みたい、と考えています。

例えば、サッカーの日本vsブラジルを誘致したり、SEAゲームス(東南アジア大会)を誘致したりしてます。国同士の大会なので盛り上がるんですよね。だから、そういう国同士の戦いをシンガポールに呼び込む。こけら落とし的な感じでやったのが、第1回のユースオリンピックです。

― なるほど。まさにハブ機能を果たしていますね。今年の正月、シンガポールに行ったんですが、観覧車の上から見た海が、船で埋めつくされている様子に驚きました。物流など国の根幹に関わる産業だけでなく、スポーツにおいても「ハブ」の発想を取り入れているんですね。これからは日本も、昔のトヨタカップのようにハブ機能を充実させるべきかもしれませんね。

インタビューの後編はこちらから


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