
スイスのサッカー、スイス・スーパー・リーグ(1部)のFCシオンは、シオン市や関係当局との18ヶ月におよぶ協議の末、新スタジアムを建設することを決定した。現在の本拠地であるスタッド・ドゥ・トゥールビヨンを改修する可能性についても検討されていたが、新スタジアム建設が最善策だと判断した。
2024年1月、シオン市、ヴァレー州安全保障・機関・スポーツ省(DSIS)、ヴァレー州サッカー連盟(WFV)、およびFCシオンは、ヴァレー州におけるプロサッカーとユースサッカーの長期的な保護を目的とした意向書(LOI)に署名し、大規模プロジェクトの概要を発表した。
『FCシオン2030』と名付けられたこのプロジェクトは、当時、5億1,000万スイスフラン(約933億円)の予算が見積もられ、1万5,000人収容の新スタジアムの建設か、スタッド・ドゥ・トゥールビヨンの改修か、いずれかを実施する計画の他、州全体におけるサッカーの若手養成システムの確立なども盛り込まれた。
また、同プロジェクトには、600戸の住宅などの関連インフラの整備も含まれており、ここから得られる収益でクラブの事業を経済的に支えることが見込まれている
2024年6月、FCシオンのクリスチャン・コンスタンティン会長は、2029年までに完成予定の新スタジアム『チェルヴィン・コロシアム』の計画を発表し、人々の注目を集めた。

コンスタンティン会長は、2003年に同クラブを財政破綻から救って以来、クラブの舵取りをしてきたが、2024年1月のプロジェクト発表に先立ち、特にインフラ関連の発展の見通しに対する不満から、クラブへの支援を打ち切ることを示唆していた。同氏は建築家でもあり、経営する『クリスチャン・コンスタンティンSA(Christian Constantin SA)』社はヴァレー州とスイスのフランス語圏に確固たる地位を築いている。
発表された新スタジアムの計画によると、開閉式の屋根を備えたこのスタジアムの最大の特徴は、ピッチを囲む3面のスタンドと、ゴール裏の1面いっぱいに設置される巨大なドーム型スクリーンだ。なお、北西側のスタンドは、ほぼ全てVIP用ボックス席となる。

2025年6月、戦略的決定に必要な調査を完了させることを理由に、2024年末から6か月間延長されていた意向書(LOI)に関する協議が終了した。プロジェクトの進行に必要ないくつかの重要な決定が下された中、プロサッカーチームの維持には、約1万5,000席の屋根付きスタジアムの新設が必要であるとの結論がもたらされた。
また、シオン市は、スタッド・ドゥ・トゥールビヨンの敷地内に新スタジアムを建設する案を支持し、スタジアムが完成するまでは、スタッド・ドゥ・トゥールビヨンでの運用を継続することを約束した。
2025年7月2日に開幕した欧州女子選手権2025のスイス側の会場の一つであるスタッド・ドゥ・トゥールビヨンは、1968年に開場し、1986年に改修も行われている。今回、同スタジアムの改修案は、耐用年数が限られているインフラの改修費用が高額となるため、断念された。
2025年4月時点で、プロジェクト全体の費用は、約4億5,000万スイスフラン(約830億円)と報じられており、プロジェクトの当初発表時点からは下方修正されている。
費用は全額民間資金で賄われる見込みで、ヴァレー州からの資金援助は予定されていない。一方、シオン市は、ラ・ガレンヌ地区の土地を無償提供するとともに、このプロジェクトへの財政支援も行うことを表明している。提供される土地には、規模の異なる7~8つの競技用グラウンドが建設される可能性があるといわれている。
今回のプロジェクトでは、U-15以上の男女若手精鋭選手を育成するためのサッカーアカデミーも市内に設立される。同アカデミーは、ヴァレー州サッカー連盟(WFV)が州のスポーツ庁協力のもと策定した『州全体のサッカー若手育成に関するコンセプト』の枠組みに準拠しており、スポーツ法に基づき、費用の最大25%を州が負担することになる。
※金額はすべて2025年7月上旬で換算
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元記事 - FC Sion gets green light for new stadium
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