
スペインのサッカー、ラ・リーガEAスポーツ(1部)のバレンシアCFは、長年中断していた新スタジアム『ノウ・メスタージャ』の建設工事を再開した。2027年夏の開場を予定している。
2025年1月10日、新スタジアムの建設に携わる主要関係組織3者の代表が出席したイベントで最終合意が交わされ、建設工事再開が決定した。同スタジアムは、シンガポール人実業家のピーター・リム氏が経営するバレンシアCFの新本拠地となる。
イベントでは、バレンシアCFのレイフーン・チャン会長、フェンウィック・イリバレン・アルキテクツ(Fenwick Iribarren Architects)社の共同設立者であるマーク・フェンウィック氏、FCCコンストルクシオン(FCC Construcción, 以下「FCC」)社のスペイン、ポルトガル、および工業担当のディレクターであるホセ・アントニオ・マドラツォ氏らが一堂に会した中、クラブは、2009年2月に中断されていたノウ・メスタージャの建設工事を再開し、2027-28シーズンまでに新本拠地へ移転する目標を掲げていることを明らかにした。なお、スタジアムの最終的な建設費は明らかにされていない。
また、同日には、ノウ・メスタージャをスポーツ、レジャー、エンターテインメントのための先駆的な施設にするための計画も発表され、7万44席(下層部2万1,512席、中層部1万6,721席、上層部3万1,811席)の座席が設けられることが明らかになった。

イベント開催の4日前、バレンシアCFはノウ・メスタージャの建設を完了させるためにFCC社を指名したと発表した。FCCは、元々のノウ・メスタージャ建設合弁プロジェクトにグルーポ・ベルトリン(Grupo Bertolín)社とともに参加していたが、グルーポ・ベルトリンはその後、プロジェクトから撤退したことが明らかになっている。
FCCは過去に、アトレティコ・デ・マドリードの本拠地『リヤド・エア・メトロポリターノ』の建設や、RCDエスパニョールの本拠地『RCDEスタジアム』とレアル・マドリードの『エスタディオ・サンティアゴ・ベルナベウ』の改修を手掛けている。
バレンシアCFによると、バレンシア市中心部に位置するノウ・メスタージャは、FIFAやUEFAのようなトップレベルの国際試合や大型イベントを開催できる最先端のスタジアムであるだけでなく、体験型レストラン、レジャー・アクティビティ、大型店舗、ミュージアム、コンサートホールなどを併設することで、試合がある日もない日も年中楽しむことができるファンのための革新的な拠点となることを目指している。
また、クラブは、6,500席以上のホスピタリティ席をもつノウ・メスタージャが、来場者だけでなく、食、技術、商業といった分野のビジネスパートナーに対しても、またとない機会を提供する場になると述べている。

クラブによると、ノウ・メスタージャがスポーツ、レジャー、エンターテイメントのベンチマークとなるため、1ユーロの投資につき、次の3つの戦略的柱のうち少なくとも1つに貢献できる仕組みになっている。
・ホスピタリティとMICE(会議、研修会、国際会議、展示会)施設の提供
・技術革新と新技術の採用

新スタジアムは、その構造と見た目を通じてクラブの本質を体現するように設計され、ファサード、階段塔、そして建物を支える基壇部分には、ダイナミックにうねる帯状のデザインが採用されている。
さらに特徴的なのが半透明の屋根だ。バレンシアの既存のホームスタジアム『エスタディオ・デ・メスタージャ』には屋根付きスタンドが1つしかないが、クラブによると、新スタジアムの屋根は地中海の光を取り入れつつ、同時にすべての座席を日差しと雨から守ることができるという。
屋根のデザインは、リヤド・エア・メトロポリターノ(スペイン)、リオデジャネイロのマラカナン(ブラジル)、ワルシャワのPGEナロドヴィ(ポーランド)、ポートエリザベスのネルソン・マンデラ・ベイ・スタジアム(南アフリカ共和国)、ヨハネスブルグのFNBスタジアム(南アフリカ)などを手掛けた、シュライヒ・ベルガーマン&パートナー(Schlaich Bergermann & Partner)社が担当した。
また、客席ボウルには、現在のスタジアムと同様にクラブのメインカラーであるオレンジと、シンボルである蝙蝠(こうもり)が印されており、人の目を引く。

ノウ・メスタージャ完成後、市内都心部の公共スペースは2万m2程増えることになり、さらに、ベニカラップ地区の住民のために市営スポーツセンターが建設されるほか、コルテス・バレンシアナス大通りに接する6,000m2の広場は、ファンや市民の集いの場として機能し、ファンゾーンや様々なアクティビティが開催される。
クラブによると、この建設プロジェクトでは、最新の環境持続可能性基準を遵守するべく資材を厳選し、節水・省エネシステムを導入するという。屋根の構造的特徴としては、鋼材の消費量を減らし、建物の二酸化炭素排出量を大幅に削減するよう設計されているほか、日々の施設運営に必要な自然環境に優しい電力を、持続的に供給することも可能になっている。
2022年6月、バレンシアCFは、当初4万9,000人とされていた収容人数を7万人収容に引き上げる対応を含む、ノウ・メスタージャ建設プロジェクトの修正計画を公表した。クラブは当時、建設工事を2022年10月に再開したい旨を明かしていたが、一方で、ノウ・メスタージャの引き渡し時期についてはずれ込む可能性が高いことを認めていた。
その後、財政的な道筋が立たずプロジェクトは滞っていたが、2024年5月、バレンシアCFは、新スタジアム用地に隣接する土地の売却が合意に達したことで突破口が開いたと主張し、さらに、完成後のスタジアムで提供するファン体験の強化のため、米ホスピタリティ大手のレジェンズ(Legends)社に協力を依頼した。
2024年7月、市議会からプロジェクト再開の許可が得られ、6ヶ月以内の工事再開を目指していたが、同年11月に融資の借り換えが完了したことで弾みがつき、2025年1月から建設が再開されることになった。

2024年11月、バレンシアCFは、既存の企業債務をすべて返済したことにより、1億2,100万ユーロ(約196億円)の長期融資と6,500万ユーロ(約105億円)の短期ブリッジローンによる資金調達に成功した。
1億2,100万ユーロ(約196億円)の新たな社債による資金は、特に著名なプロ投資家で構成される米国私募債(USPP)を通じて調達された。6,500万ユーロ(約105億円)の短期ブリッジローンの債権者はアメリカの投資銀行のゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)社だったが、今後、ノウ・メスタージャのプロジェクトファイナンスによって借り換えられる予定だ。
2030年FIFAワールドカップにおいて、ノウ・メスタージャは、スペインサッカー連盟が発表した11の候補地リストから外された。2030年FIFAワールドカップは、スペインがポルトガル、モロッコとともに共催し、さらに大会期間中は、ウルグアイ、アルゼンチン、パラグアイにおいてもワールドカップ100周年を祝う記念試合を行うことが、2024年12月のFIFAの正式な承認により決定している。
※金額はすべて2025年4月下旬で換算
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元記事 - Valencia restarts work on Nou Mestalla
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