イングランドのサッカー、プレミアリーグ(1部)のリヴァプールFCは、2021-22年シーズンを通じて試行する取り組みとして、本拠地『アンフィールド』で特に熱狂的なホームサポーターが集まるゴール裏のコップエンドにセーフスタンディング席を導入したと発表した。
リヴァプールは2021年6月、新たにセーフスタンディング席を設置する計画を発表したが、その際にクラブはセーフスタンディング席だけの特別席エリアを整備する予定はないと強調していた。リヴァプールが今回セーフスタンディング席を試験導入するのは、英国政府のスポーツ施設安全局(Sports Grounds Safety Authority=SGSA)の安全検査で、立見による観戦が常態化していると指摘されていたコップエンドとその対面のゴール裏であるアンフィールド・ロード・スタンドの下層階のみとなる。
クラブはコップエンドに試験導入されたセーフスタンディング席について、2021年8月上旬に開催されたプレシーズンマッチのアスレティック・ビルバオ戦までに設置され、翌日の同じくプレシーズンマッチのCAオサスナ戦での運用が可能になったと発表した。
残りの設置作業は、プレミアリーグの2021-22年シーズンのホーム開幕戦となる2021年8月下旬のバーンリーFC戦までに終える見込みで、クラブは今回のセーフスタンディング席試験導入が、SGSAが懸念していた高リスクエリアでのサポーターの安全を守るためのものだとしている。
また、セーフスタンディング席以外にも、通常の観戦席の背後に安全バーが設置された座席も導入され、リヴァプールはこれらの座席について、観戦する際に視覚的に邪魔になるようなことはないと説明。これらの座席は、試合中の得点シーンやチャンスの場面などで観客が安全に立ち上がっても、他の場面では着席できる設計になっているとしている。
今回、コップとアンフィールド・ロード・スタンドの両スタンドの座席で合計7,800席がアップグレードされ、そのうち1,800席はコップの後方部分、6,000席がアンフィールド・ロード・スタンドの下層階の座席だ。
2021年6月、リヴァプール市議会の建築開発委員会がアンフィールド・ロード・スタンド改修による増設を承認したため、今後予定されている改修後にアンフィールドの収容人数は6万1,000人となる。また、クラブは、改修後のアンフィールドで5年間で最大6回のコンサートまたは大型イベントを開催する承認も得た。
1989年4月上旬に中立地シェフィールドのヒルズボロで開催されたFA杯準決勝のノッティンガム・フォレスト戦では、収容人数を大幅に超える観客がゴール裏スタンドに押し掛けたことで、結果的に97人のサポーターが命を落とした。リヴァプールにとって、立見でのサッカー観戦は感情的なわだかまりを呼び起こすものでもある。この「ヒルズボロの悲劇」により、イングランドの最上位2部の全スタジアムで、立見の観戦が禁止されることになった。
2021年5月、警察の調書を改竄した罪に問われていた元警官2人と元弁護士1人について、担当裁判官が無罪放免としたことは記憶に新しい。リヴァプールは裁判の結果にかかわらず、アンフィールドは全席着席型スタジアムで在り続けると表明しており、今回の試験導入についても、あくまで安全性を考慮した座席のアップグレードに過ぎず、決してセーフスタンディング席の特別エリアを整備したものではないと主張している。
地元紙のLiverpool Echoは2021年6月、クラブが今回の発表に先立ち、ヒルズボロの悲劇のすべての遺族に対してセーフスタンディング席試験導入に関する情報を明記した手紙を送ったと報じている。また、リヴァプールのサポーター連合である『スピリット・オブ・シャンクリー(Spirit of Shankly)』は2018年、クラブのファンやサポーター、そしてヒルズボロの悲劇の遺族や生存者を連れ、スコットランドのサッカー、プレミアシップ(1部)のセルティックFCのセーフスタンディング席の運用実態を視察した。
セーフスタンディング席はプレミアリーグの新シーズン開幕に備え、チェルシーFCのスタンフォード・ブリッジやマンチェスター・ユナイテッドFCのオールド・トラッフォードでも導入済みで、マンチェスター・シティFCのエティハド・スタジアムでも5,620席のセーフスタンディング席が設置される予定だ。
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元記事 - Liverpool begins installation of rail seating at Anfield
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