ロンドン議会の調査報告書、ロンドン・スタジアムの財政状況を痛烈に批判
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ロンドン・スタジアム
ロンドン・スタジアム (画像:London Stadium)

英ロンドン議会の予算・実績検証委員会は、ロンドンレガシー開発公社(London Legacy Development Corporation=LLDC) の財政状況の調査をまとめた報告書を公表し、ロンドン・スタジアムの年間維持費が800万ポンド(約11.5億円)で、ロンドン市民の大きな負担になっていることを指摘した。

ロンドン・スタジアムは、2012年ロンドン五輪のメイン会場として整備された多目的スタジアムで、大会閉幕後は主にサッカーのプレミアリーグ(1部)のウェストハム・ユナイテッドFCの本拠地して使用されている。予算・実績検証委員会の報告書によると、ウェストハムがEFLチャンピオンシップ(2部)に降格した場合、年間維持費はさらに150万ポンド(約2.15億円)増え、950万ポンド(約13.6億円)規模に膨らむ可能性が高くなる。

報告書では、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、LLDCのイーストバンク再開発事業の建設および開発費用が大幅に増加したとしている。また、新型コロナ対策としてこれまでに1億5100万ポンド(約217億円)が投入されるなど、納税者への負担が増え続けていることを指摘しつつ、パンデミックが発生したことによる市民への実質負担額については、現在も試算モデルを模索している段階だと結論付けた。

また、報告書では、LLDCが5億2000万ポンド(約746億円)の借入金の全額返済ができなくなる可能性が高くなっており、財政状況が好転する見通しも立っていないと警告している一方で、新型コロナ感染拡大により、多くのライブイベントが中止・延期されたことで支出額は減少したとも指摘している。

2020年夏だけでも野球の北米最高峰、メジャーリーグ・ベースボール(MLB)のロンドン・シリーズ、英国陸上競技連盟のアニバーサリーズゲームズ、そして人気バンドのグリーン・デイ、フォール・アウト・ボーイ、ウィーザーの合同コンサートなど、ロンドン・スタジアムで開催予定だった大型イベントが延期を余儀なくされた。LLDCは、ロンドンのサディク・カーン市長の要請通り、年間740万ポンド(約10.6億円)の節約を実現できると表明しているが、報告書ではその節約額の70%が(イベント中止に伴う)ロンドン・スタジアム稼働率減による管理費減によるものだと指摘している。

予算・実績検証委員会のスーザン・ホール委員長は、ロンドン・スタジアムの財政状況について次のように話した。

「ロンドン・スタジアムはロンドン市民の経済的負担になっており、LLDCは引き続き維持費削減のために全力を尽くさなければなりません。新型コロナ対策とグレーター・ロンドン・オーソリティーが直面している財政問題を鑑みると、どの分野に優先的に資金を投入すべきかは明白であると当委員会は考えています。

また、当委員会の調査では、クイーンエリザベス・パークには毎年莫大な設備投資が実施されているのにもかかわらず、その管理団体であるLLDCの企業価値は、2014-15年から2019-20年までの5年間で3億8100万ポンド(約547億円)も下がっているという驚愕の事実も発覚しました。これは、次の市長の任期中に爆発する可能性のある時限爆弾といえます。市場価値が下がり続ける開発事業にいつまでも巨額の維持費を投入するのが当然であると、今後もロンドン市民が許容してくれだろうと期待するのは現実的とはいえません。それでなくてもロンドンには、低所得層向け住宅政策が一向に進んでいないという大きな問題があります。

LLDCは善意によって設立されたものの、事業を実施していく過程で失われたものは大きいようです。ホワイト・エレファント(白い巨象=稼働率が低く金喰い虫になっている遊休インフラを指す俗称)化したスタジアムから一向に進まない低所得層向け住宅開発事業まで、失敗続きのプロジェクトに投資を続ける意義を理解または正当化することは困難です。2012年ロンドン五輪の成功で、英国中が誇りと喜びに満ち溢れましたが、残念ながらそのレガシーはロンドン最大の社会問題を解決できずに、経済的負担としてロンドン市民に重くのしかかっています」

予算・実績検証委員会の報告書の発行を受け、LLDCの広報担当者はBBCに対し、次のように話した。

「報告書は事業を取り巻く多くの要因を無視しているだけでなく、間違った指摘も見受けられることから、非常に残念に思っております。このような状況だからこそ、雇用創出、地域コミュニティ形成、そして投資促進を実現する再開発事業が必要なのです。ロンドン・スタジアムで2017年に開催された世界陸上だけでも1億ポンド(約143.5億円)の経済効果があったのですから」

※金額はすべて2021年1月下旬で換算

Copyright: Xperiology/TheStadiumBusiness.com - reproduced with permission.
元記事 - London Stadium's financial status criticised in report

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