ローズ・クリケット・グラウンド、第2期改修工事の進捗と新たな永年会員制度について発表
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(画像: MCC)

ロンドンのローズ・クリケット・グラウンドを所有するメリルボーン・クリケット・クラブ (Marylebone Cricket Club=MCC)は、同スタジアムの改修事業費の再試算額と、新型コロナウイルス(COVID-19)が事業に与えた影響について発表した。

ローズの第2期改修計画では、2013年に既存のコンプトン・スタンドとエドリッチ・スタンド解体後に、新たに3層のスタンド2棟が整備されることが発表され、2019年1月にはウェストミンスター区議会が建築開発許可書を交付していた。

MCCと建設会社のISGコンストラクション(ISG Construction)社は2019年9月に改修工事を起工。同年11月から12月にかけて、コンプトン・スタンドとエドリッチ・スタンドの解体工事が完了。2020年1月から2月にかけては新スタンド2棟の躯体工事が開始し、3月・4月にはコンクリートの施工が始まっていた。

MCCは会員向けにウェビナーを開催し、5月には現場で141,000人時分の作業が遂行され、これまでに改修整備予算5,250万ポンド(約69.3億円)のうち、主に設計費用や建設費で3,000万ポンド(約39.6億円)が費やされたことなど、詳しい進捗状況を動画で説明した。また、今後は2021年4月までに毎月200万ポンド(約2.64億円)の出費が見込まれ、竣工は2021年5月を予定していることも明らかにされた。

新たなスタンド2棟には300席のディベンチャー席(事業債購入者向けの特別席)や飲食売店12店舗、壁面に多種多様なビールサーバーが並ぶビアウォール2面、高級ホスピタリティレストラン2店なども整備され、収容人数は現在の28,500人から31,000人に増える。

MCCのロバート・エブドン不動産担当事務局長補佐は、ウェビナーの中で会員に向け、ISGコンストラクションが過去10年間で最も降水量の多い冬に苦しみながらも作業を続けたことを説明した。

また、エブドン氏は、旧コンプトン・スタンドの地下に流れるビクトリア朝のテムズ水道が老朽化していたこと、そしてMCCがその損傷も修復しなければいけなくなり、結果的に2019年12月と2020年1月の作業がその影響を受けたことを説明したうえで次のように話した。

「ウェストミンスター区議会は非常に協力的で、スケジュールに追いつくように4か月間にわたって毎週末作業したいという私たちの前代未聞の要請を聞き入れてくれました。そして、ようやく作業がスケジュールに追いつきそうになった3月にコロナ禍が発生し、ロックダウンが実施されたのです。

ただ、ISGが早急にCOVID-19感染防止プランを導入してくれたおかげで、毎日100~125人の建設職人が常にソーシャルディスタンシング規則を遵守しながら、作業を続けることができました。

建材のサプライチェーンの問題もあり、通常時と比べて生産性は60%ほどまで下がりましたが、ISGが素晴らしい仕事をしてくれたので、現在は通常時に近い生産性を実現しています。

改修工事は元々2020年8月、9月、10月を通じて継続していく予定だったので、8月にローズでクリケットの試合を開催するスケジュールが組まれても、問題なく準備することができます。ISGは当初の工期通り、2021年5月までには新スタンド2棟を完成させる予定です」

2020年5月27日にはナイター照明の設置作業が再開し、6月末には完了する予定だ。新スタンドのスコアボード設置作業も2020年6月に開始し、同月末には既存のスコアボードシステムと統合される。

エブドン氏は、MCCは非常事態準備金を90万ポンド(約1億1,876万円)残しており、改修プロジェクトの進捗状況は良好だとしたうえで、次のように話した。

「改修工事を中止または中断した場合、事業契約に関する請求権が行使されたり、保証に関する紛争、サプライチェーンの複雑化、そしてこれまでにすでに建設・導入された設備の保護に関する問題など、MCCは無数の難題に直面することになるでしょう。

また、工事を中断した場合は、MCCが予算計上していた新スタンドに増設される2,600席、ディベンチャー席300席、飲食売店12店舗、そしてレストラン2店などによる増分収益も見込めなくなります」

エブドン氏は、プロジェクトが中断した場合に契約業者が請求してくる撤去費用、利益損失、費用損失、中断期間中に発生する可能性のある訴訟費用、建材調達に関する問題、建設費高騰などの不測の事態に備え、MCC会員に400~500万ポンド(約5.3~6.6億円)を準備しておくよう要請したとし、次のように話した。

「MCCにとって非常に重要な今回の改修工事が無事に竣工するよう、資金援助の提案を支持してほしいと要請しました」

また、MCCのガイ・ラベンダー最高経営責任者(CEO)は、今シーズンのMCCの収入が3000万ポンド(約39.6億円)減となることを明らかにしたうえで、次のように話した。

「当面の間、収入を生み出すはずだった大規模イベントは開催できません。

すべての会員の皆様が同意してくれると思いますが、工事の中断や遅延によって生じるコストは400~500万ポンド規模になるため、MCCの将来的な財政基盤を守るためには、今回の改修工事の完遂は必須条件です。

直近4か月間でクラブ内の各委員会は2020年、そして2021年のコロナ禍の影響を評価した財務モデリングに従事するなど、多くの業務をこなしてきました」

さらに、ラベンダーCEOはMCCの年次総会で提示された永年会員制度について、次のように説明した。

「今回、会員の皆様に提示させていただいた永年会員制度には大きな特徴が2点あります。まず、既存の正会員の皆様が毎年の更新時に年会費をお支払いになる形態から、永年会員費を一度だけお支払いになってもらう形態に移行できるという点です。永年会員への移行のご案内は、年齢層ごとに会員数が限られ、また、異なる会員カテゴリを反映するかたちで提供されます。会員の皆様に魅力的だと感じていただける価格を設定できていれば嬉しいです。

2点目の特徴は、MCCの財政目標を達成するために必要に応じて会員数の増加が可能になっていることです。現在、会員の皆様に提示されている新規の永年会員数は350人となっています」

MCCの新規の永年会員費は8万ポンド(約1,056万円)であるため、350人の永年会員を獲得した場合は、総額2,800万ポンド(約37億円)の収入となり、MCCが借入金ではなく、自己資金を新事業に投資できるようになる。

ローズ・クリケット・グラウンドの会員権は非常に高い人気を誇り、現在は12,000人が順番待ち名簿に登録している状態だ。そのようなファンは永年会員費を払うことができれば、名簿の順番を飛び越えることができる。長年MCCを支えてきた既存の会員が永年会員に昇格する場合は、永年会員費は新規申請者よりも安くなる。

*換算額はすべて2020年6月下旬時点のもの

Copyright: Xperiology/TheStadiumBusiness.com - reproduced with permission.
元記事 - Lord's: Lockdown, Liabilities and Lifetime Memberships

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