イングランド北部の経済団体、公共機関によるエヴァートンの新スタジアム計画中止要請を批判
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エヴァートンFCの新スタジアムのデザイン改訂案
エヴァートンFCの新スタジアムのデザイン改訂案 (画像:Everton FC)

イングランド北部の経済成長を推進する企業グループのノーザン・パワーハウス・パートナシップ(Northern Powerhouse Partnership=NPP)は、同国のサッカー、プレミアリーグ(1部)のエヴァートンFCの新スタジアム建設計画に対する英国公共機関の批判について、「スタジアム建設計画を不必要に遅延させることは大きな過ち」として激しく糾弾した。

エヴァートンはこれまで、新スタジアム(収容人数52,888人)の2021年開場を目指して同計画を推進してきたが、スタジアムの建設予定地がUNESCO世界遺産に登録されているブラムリー・ムーア・ドックの一部であることから、英国ヴィクトリア協会(The Victorian Society)とイングランド歴史的建造物・記念物委員会(Historic Buildings and Monuments Commission for England=ヒストリック・イングランド)が懸念を表明。ヒストリック・イングランドはクラブ関係者との協議を続けたものの、最終的に新スタジアム建設が「1840年代に建設され、ドック設計や荷役作業の分野で世界中の港湾に多大な影響を与えたブラムリー・ムーア・ドックを損傷することになる」と判断し、2020年9月に英国政府に対し、建設計画を許可しないよう要請していた。

クラブは2020年8月末にドック保全も視野に入れたデザイン改訂案を発表し、リバプール市議会に提出済みの建築開発許可申請についても同様に改訂するなど、歴史遺産の保全を訴える団体の懸念に対して妥協案を提示する姿勢を見せていただけに、ヒストリック・イングランドが協議を続けずに英国政府に直接働きかけたことに不快感を示した。

一方、ヒストリック・イングランドはエヴァートンがデザイン改訂案を提示したことには謝意を述べたが、同時に第2級歴史遺産指定されているブラムリー・ムーア・ドックの一部が埋められることが計画されていることが最大の懸念だとあらためて表明した。

ヒストリック・イングランドのこうした動きについて、NPPのダイレクター、ヘンリ・ムリソン氏はLiverpool Business Newsに対し、次のように話した。

「エヴァートンの新スタジアム建設計画のような10億ポンド(約1,345億円)級の超大型事業を不必要に遅延させるのは大きな過ちです。

ブラムリー・ムーア・ドックの世界遺産登録が、リヴァプールの観光都市としての地位を高めることに役立ったことは事実ですが、未だに過去の世界遺産登録に固執しているヒストリック・イングランドの姿勢は、スタジアム建設が将来的にもたらす恩恵よりも市のお荷物不動産の方が重要だという時代錯誤的な考えを象徴しています。

スタジアム建設計画のような大型インフラ整備事業には、長期的にも短期的にもリヴァプール地域やイングランド北部における経済発展のポテンシャルを解き放つ力があります。今回のスタジアム計画は、エヴァートンFCやそのパートナー企業といった先進的な考えを持つ組織が、地域コミュニティへの投資を通じたイングランドの南北格差の解消を重要視していることの証左ともいえるでしょう」

クラブが提出したデザイン改訂案では、新たな階段広場の設置や立体駐車場案の撤回など、主に西スタンド側の変更点が目立った。また、スタジアムの躯体は以前のデザインよりも左右対称に近い形状になり、西スタンドの観客はマージー川の雄大な景色を堪能できるようになる。現在、世界遺産に指定されているブラムリー・ムーア・ドックは、地元住民も観光客も立ち入り禁止となっているため、推進派は新スタジアムやその周辺開発こそがドック跡地の最も有効な活用方法だと考えている。

新たにデザインに組み込まれた階段広場の完成イメージ
新たにデザインに組み込まれた階段広場の完成イメージ (画像:Everton FC)

また、西埠頭(ウェストキー)に設置する予定だったソーラーパネルをスタジアムの屋根に設置することで、興行のないノンマッチデーの一般利用やクラブの障害者サポーター用の駐車場のために用地を解放する計画も提案されている。

なお、エヴァートンの現在の本拠地『グディソン・パーク』を設計した著名なスコットランド人スタジアム建築家、故アーチボールド・リーチ氏の作風を彷彿させる格子模様のレンガ風ファサードは引き続き採用されるほか、躯体の高さが当初案より低くなることから、新スタジアムはリヴァプール市議会の世界遺産登録地関連計画文書で定義される中層建築物になる予定だ。

リヴァプール市議会やヒストリック・イングランド、その他の歴史遺産関連団体と協議を重ねてきたエヴァートンは、新スタジアム改訂案はブラムリー・ムーア・ドック地区の伝統や歴史に敬意を払いつつ、その保全を支援するもので、新スタジアムこそが廃墟のような状態で放置されている同地区を有効活用する最適な手段だと主張している。

新スタジアム計画では、ブラムリー・ムーア・ドックが世界遺産登録される決め手となった「顕著な普遍的価値(Outstanding Universal Value)」の代表的な存在であるドックの構造的特徴と西側の壁を遺すため、スタジアム完成後も水路は維持されることが決まっている。そして、第2級歴史遺産に指定されている旧アキュムレータ管理棟などの一部設備は復元され、ノンマッチデーの観光名所として新たな賑わいを創出する場所になることが期待されている。

歴史遺産指定されているアキュムレータ管理棟(画像右端)は復元されて観光名所に
歴史遺産指定されているアキュムレータ管理棟(画像右端)は復元されて観光名所に (画像:Everton FC)

計画の規模が大きいことから、リヴァプール市議会は今後、2020年度中に決定を下すために、建設開発委員会の臨時会議を開催する可能性がある。建築開発許可が下り、資金調達方法が計画通りに確定した場合、エヴァートンは2021年初頭の建設工事着工を目指すことになる。

※金額はすべて2020年9月下旬で換算

Copyright: Xperiology/TheStadiumBusiness.com - reproduced with permission.
元記事 - Business group criticises Everton stadium

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