編集者コラム第19回 ~ 鮮やかに開花したヨドコウ桜スタジアムのこけら落としに行ってきた ~ (後編)
(取材と文、写真・筑紫直樹)
この日は、コロナ対策で入場人数の上限が5,000人に制限されたため、入場券を購入できなかったサポーターのほか、ヴィッセル神戸のサポーターは観戦が叶いませんでしたが、それでもピンクのユニを着たセレッソサポーターたちが集まってキックオフ前の時間を楽しんでいるようでした。バラエティ豊かなスタグルも人気で、特に選手がプロデュースしたメニューは好評を博していました。
キックオフの時間が近くなると、各ゲートから入場していく観客の姿が増えましたが、この日の神戸戦は、セレッソ大阪のトップパートナーである株式会社淀川製鋼所による『ヨドコウサポーティングマッチ』として実施され、来場者先着5,000名にオリジナルタオルマフラーがプレゼントされました。このような特別な日にだけもらえる特別なグッズというものは素晴らしい思い出の品になります。
さて、桜スタジアムの改修のポイントはいくつかありますが、最大の目玉は何といっても新たにメインスタンドとして生まれ変わった西(旧バック)スタンド、そして屋根とサイドウォールの設置で箱型スタンドに改修された北スタンドです。この2つのスタンドが大きく進化したことで、ヨドコウ桜スタジアムは日本屈指のフットボールスタジアムになったといえるでしょう。
新メインスタンドには欧米のスタジアムを彷彿させる高級感あふれるVIPラウンジやスカイボックス、快適で機能性の高いロッカールームや諸室、最前列の客席とピッチの距離がわずか5.8mと、日本で最もピッチに近いとされるゼロタッチの観客席といった特徴が揃っています。また、最前列の座席もカバーする大屋根、そして2階席の最後尾の席からもピッチのアクションが近く見える傾斜角も新メインスタンドが素晴らしい観戦環境を提供している理由に挙げられます。
そして、欧州の伝統的なフットボールスタジアムの特徴でもある、屋根とサイドウォールに覆われた箱型のホームゴール裏は、1992年当時、収容人数1万5,000人規模では世界最高レベルと讃えられた旧カシマスタジアムの記憶を呼び起こすものといえますが、ヨドコウ桜スタジアムのホームゴール裏には両端にサイドウォールが設置されている分だけ、観客の声援や歓声の逃がさずに 「音圧」 としてピッチ上のセレッソの選手には後押しの力を、相手チームの選手には重圧を与える効果があります。
この日も後半44分に鳥海晃司選手が起死回生のヘディング同点弾を決めた瞬間、ホームゴール裏のボルテージは最高潮に達し、サポーターたちの大歓声がスタンド、そしてピッチに響き渡りました。入場者数が制限されていたにもかかわらず、前出のスタジアムのナノブロック®を自分用に購入したスタジアムマニアの紳士も「欧州のスタジアムにそっくりだ」と感動していました。
また、この日、セレッソ大阪は、2021年8月末の本格導入のためのトライアルとしてヨドコウ桜スタジアムで無料の公衆無線LAN(Wi-Fi)サービスを提供しました。スタジアムの段階的改修という難題に取り組みながらも、一歩ずつ着実に最高のスタジアムづくりに邁進し、ICTの面でも積極的に最新型スタジアムを目指すクラブの野心をひしひしと感じました。今後もこの素晴らしいフットボールスタジアムが成長していく姿を追いかけていきたいと思います。
<了>