ニューノーマルにおけるイベントの在り方とは-英マンチェスターのイベント業界関係者がウェビナーで議論
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明確なガイドラインの必要性を訴えるイアン・ナトール氏
明確なガイドラインの必要性を訴えるイアン・ナトール氏 (画像:TheStadiumBusiness)

2020年8月7日、イングランドを代表するクリケット場のエミレーツ・オールド・トラッフォードは、スポーツやエンターテインメント業界がいかにコロナ禍に適応しているか、そしてニューノーマルにおけるイベントの在り方というトピックでビデオ会議方式のパネルディスカッションを実施し、その様子がウェビナーとして配信された。

パネリストとしてTheStadiumBusiness創始者のイアン・ナトール氏、グレーター・マンチェスター広域市のアンディ・バーナム市長、ランカシャー・クリケット((LancashireCricket)のダニエル・ギドニー最高経営責任者(CEO)、そしてマーケティング・マンチェスター(MarketingManchester)のマネージング・ダイレクターであるシオナ・サザン氏が参加した。

このウェビナーは、エミレーツ・オールド・トラッフォードが実施している『セーフ・イン・ワン・プレイス(SafeinOnePlace)』キャンペーンの一環で開催され、300人以上のイベント関係者が視聴登録した。『セーフ・イン・ワン・プレイス』は、同クリケット場が無観客で公式戦を実施した経緯で得た経験や成功事例を広く共有する目的で2020年7月に開始したキャンペーンだ。

英国では、ボリス・ジョンソン首相がビジネスイベント、会議、展示会が2020年10月1日から開催可能になると発表しており、『セーフ・イン・ワン・プレイス』では現在の英国政府の感染予防ガイドラインを遵守したかたちでイベントを開催する場合に必要になってくる対策を紹介している。

今回のウェビナーでは、主に次のトピックについて意見が交わされた。

  1. 2020年10月1日のイベント自粛解禁が近づく中、業界ではイベント再開の準備はできているのか
  2. イベント再開に向け、効率良く準備する方法
  3. コロナ禍において、英国政府のイベント業界への対応は公平かつ正当なものであったか
  4. 2020年8月から政府が導入・展開し、90分で新型コロナウイルス感染の有無を判定できる新検査(通称:90分検査)の重要性
  5. ソーシャルディスタンスを確保したうえで開催するイベントに関するガイドラインの改正の必要性

グレーター・マンチェスター広域市のアンディ・バーナム市長は、2020年10月1日の解禁日について次のように話した。

「私からのアドバイスは、まずは10月1日の解禁日に集中し、イベントを安全に再開するための対策を確実に配備していくことが第一歩だということです。その意味では、エミレーツ・オールド・トラッフォードのアンディ(・ギドニーCEO)の体験は非常に参考になり、学ぶことは多いと思います。再開直後に安全対策の綻びが露呈してしまうと、業界全体の発言力が低下してしまう恐れがあるので、安全なイベント再開に向けて確実に計画を進めていくことが重要です。

私だったら、まずは(ソーシャルディスタンスの)10㎡空間ルールの実施を提案していきます。会議などの屋内イベントを実施しても大丈夫なんだという安心感の醸成に努め、それから年末に向けてさらなる緩和を求めていけばいいのです。まずは安全な軟着陸を目指し、イベントの開催実績を確実に積み上げてから、緩和について議論していくべきです。いきなり拙速に物事を進めてしまうのは、業界全体にとってリスクが大き過ぎると考えています」

エミレーツ・オールド・トラッフォードでは、2020年7月にクリケットのイングランド代表が西インド諸島とのテスト(クリケットの最上位公式戦)シリーズの第2戦と第3戦が開催され、第3戦でイングランドが269ラン差で西インド諸島を破り、今シリーズを2-1で勝利した。

ウェビナーではギドニーCEOが、イベント業界の活動再開における90分検査キットの重要性について話した。

「テストマッチを無観客で開催する方向になった際に、一番最初に私たちが着目したのが90分検査キットの存在でした。試合を安全に開催するには、関係者の検査を徹底していくのが一番確実です。

ただ、直後に発覚したのは、英国政府がアメリカのサプライヤーに注文した90分検査キットの精度は決して高いものではないということでした。イベントに対する顧客の自信、安心感、そして信頼を確かなものにするには、戦略の中心に検査を据えなくてはいけません。

人々は検査結果によって安心感を得ているので、英国政府が90分検査キットの精度を保証しないかぎり、安心感は得られません。逆に政府の保証があれば、イベント業界が置かれた状況を一変させることも可能でしょう。ただ、検査だけですべてを解決することはできず、多くの規制を緩和していくことが必要になります。

また、イベント開催には、私だったら体温測定(検温)、関係者の検査・追跡用の詳細情報管理、単方向システム、除菌ジェル等の手指消毒剤、個人用保護具(PPE)、マスク、そしてもちろんソーシャルディスタンスの確保も必須にします。

イベント参加者や展示ブース出展者、スポーンサーブースなどにかかる費用は安くはありません。それを考えると、90分検査キット1式の100~150ポンド(約1万4000円~2万900円*)というのは大した金額ではないといえます。ですが、この費用を出したくないといって検査をせず、結果的にクラスターが発生すれば、イベント業界は再度活動できなくなることになります。そういう意味では、検査キットの費用は、イベント業界全体のコストと言い換えることもできるかもしれません」

また、マンチェスター市の観光促進や経済成長推進事業を担当するマーケティング・マンチェスターのサザン氏は、新型コロナの影響で同市の観光産業が大打撃を受けたとし、次のように話した。

「マーケティング・マンチェスターには観光業専門アナリストがいるのですが、彼女は2020年8月末までに42億ポンド(約5,836.5億円)相当の機会損失が発生すると試算しています。マンチェスターの観光経済は年間90億ポンド(約1.25兆円)なので、その47%相当が既に損失しているということになります。現在の状況下では、イベント主催者と参加者の双方が安心感を得ておらず、これには感染防止ガイドラインが複雑でわかりにくく、また、頻繁に改訂されていることも起因していると思われます。

イベント産業評議会の役員の方が、政府が安全を保証し、通常開催の解禁日を設定するよう要請したと記憶していますが、何よりも大事なのは安全性の確保です。マーケティング・マンチェスターの会議イベント事務局では、COVID-19パンデミック発生前には会議イベントだけで52イベントの準備が進められていました。そのほとんどが現在は中止、または延期されている状況です。ただ、多くのイベ ントは中止ではなく、延期の道を選択しているため、第4四半期には多くのイベントが実施されることを願っています」

世界中のサッカークラブやスタジアム&アリーナ関係者が集まる『ザ・スタジアムビジネス・サミット&ベニューテクノロジー・ショーケース(TheStadiumBusinessSummit&VenueTechnologyShowcase)』もCOVID-19の影響で延期され、2020年12月2~3日の2日間、マンチェスターのエミレーツ・オールド・トラッフォードで開催される予定だ。

同イベントを主催するナトール氏は、業界関係者が集まる会議イベントの重要性について次のように話した。

「会議イベントは、新たなビジネス関係が生まれ、新たなアイディアが実現に向かって進みだす場であり、ビジネスや経済成長に欠かせない機会です。

アンディはビジネスの安心感や信頼関係は安全性によって確保されると話しましたが、私はビジネスは信頼関係によって成長するもので、さらに信頼関係は人が人と直接会うことで構築されるものだと考えています。

もちろん、一度も会ったことのない人から商品をネット上で購入することはありますが、それはビジネスパートナーを人間として好きになったり、今後もサービスを提供していこうという関係とは全く違うものです。

イベント業界は2020年10月1日の再開を目指していますが、そのためには業界全体で遵守すべき明確なガイドラインが必要です。ソーシャルディスタンスにしても、2m間隔ルールや10㎡空間ルールなど、対策がバラバラでは効力を持ちません。安全性の確保が最優先で、確実に開催実績を積み上げていくというアンディの意見は正しいと思いますが、それには政府が明確なガイドラインを示すべきで、我々は未だにそのような指針を待ち続けている状態です。

例えば、現在のガイドラインでは、妻はマスクさえ着用していれば、300人の旅客と一緒に飛行機で3時間かけてイタリアに渡航することが安全とされているのに、私は2,000㎡の広大なスペースのドアをすべて開放して常に換気できる状態にしても、500人の参加者を入れることができないどころか、屋外スペースで会議イベントを開催することさえもできません。一貫性に欠けており、どのような科学的根拠や基準でガイドラインが設定されているのか、さっぱりわからないのが問題です」

パネルディスカッションの完全版(英語)はこちらで閲覧可能

※金額はすべて2020年8月中旬で換算

Copyright: Xperiology/TheStadiumBusiness.com - reproduced with permission.
元記事 - HOSTING EVENTS IN THE 'NEW NORMAL'

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