英国でも大型施設の臨時病院化が広がる-スタジアム&アリーナとCOVID-19
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カーディフのプリンシパリティ・スタジアム
カーディフのプリンシパリティ・スタジアム (画像:Principality stadium)

世界中で新型コロナウイルス(COVID-19)が爆発的に感染を広げる中、スタジアムやアリーナといった大型施設が臨時病院や医療従事者のサポート施設として有効活用されるケースが増えている。世界屈指のスポーツ大国である英国でも、スポーツ施設の所有者と国民保健サービス(National Health Service=NHS)が手を組み、COVID-19に苦しむ患者の治療体制構築に臨んでいる。

ロンドン屈指のコンベンションセンターが大規模臨時病院に

英国のマット・ハンコック保健・社会福祉相は2020年3月24日、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が拡大するロンドンで医療サービスを提供しているNHSを支援するため、3月末からエクセル展覧会センター(ExCeL Centre)を臨時病院に改修していく方針を発表した。

ハンコック保健・社会福祉相はCOVID-19定例会見で次のように説明した。

「来週、ロンドンのエクセル展覧会センター内に新たにNHSナイチンゲール病院を開設いたします。NHSナイチンゲール病院は、各棟2,000人を収容する病棟2棟で構成される臨時病院です。今後は軍およびNHSの医療関係者の力を借り、症状に苦しむすべての方々に適切な治療をお届けできる医療体制を整備していきたいと考えています」

保健省は同日、英国内のCOVID-19感染者数が8,000人を超え、死亡者数は422人になったと発表した。エクセル展覧会センターは、2000年にロンドン東部の港湾再開発地区に開場したコンベンションセンターで、会議や展示会、スポーツ興行などが開催される大型施設だ。屋内のイベント会場の総面積は87,000㎡で、最大で68,000人以上を収容可能であるほか、小規模の諸室スペースが複数ある。

ロンドンのエクセル展覧会センター
ロンドンのエクセル展覧会センター (画像:Inspire Displays)

ニュース配信サイトのITVNewsは、軍の設計技師が22日にエクセル展覧会センターを訪問し、臨時病院としての活用方法について現地で確認したと報じた。これについて国防省の広報担当官は次のように説明した。

「COVID-19感染状況が日々変化していく中で、NHSイングランドがどのようなシナリオにも適切に対処できるよう、軍の設計技師がロンドンのエクセル展覧会センターを訪問しました。これは、同施設をどのように改修すればNHSの医療ニーズに最大限応えられるか検証するためです」

感染拡大でロンドン市内のICU(集中治療室)の病床は空きがなくなってきており、仮設の臨時病院として整備されるNHSナイチンゲール病院は、今後も増加が予測される深刻な呼吸困難の症状に苦しむ患者への医療提供が期待されている。

ロンドンは英国の他の都市よりも1週間半から2週間半早く感染が拡大していると考えられており、TheGuardian紙は今後も国内で複数の臨時病院が整備されるという国防省筋の関係者のコメントを報じている。

病院に隣接するプレミアリーグクラブが支援を表明

ロンドン北西部を本拠地とし、サッカーのプレミアリーグ(1部)に所属するワトフォードFCは、クラブが所有する全施設をウェスト・ハートフォードシャー病院NHS信託基金(West Hertfordshire Hospitals NHS Trust=WHHT)が有効利用できるよう準備をしていると発表した。

WHHTは3ヶ所のNHS管轄病院を運営しており、その一つであるワトフォード総合病院は、クラブのホームスタジアムであるヴィカレージ・ロードに隣接している。ワトフォードFCはNHS職員への施設オリエンテーションの開催、緊急会議用スペース、倉庫スペース、託児所などの提供が可能としたうえで、クラブとNHS幹部が医療サービスの支援に必要な具体策実施に向けて調整中だと述べた。

ヴィカレージ・ロードと隣接するワトフォード総合病院
ヴィカレージ・ロードと隣接するワトフォード総合病院 (画像:Football Tripper)

ワトフォードFCのスコット・ダックスベリー会長兼CEOは、クラブ施設の提供について次のように話した。

「今はサッカーのことは忘れ、NHSとワトフォード総合病院を支援するために私たちができることを実施すべきです。私たちは病院に隣接するスタジアムのクラブということで、一番お手伝いしやすい立場にあります。NHS職員の皆様とそのご家族を支援できるよう、クラブも全力を尽くします」

ロンドン以外でもスポーツ施設の病院化を準備

イングランド中部のウェスト・ミッドランズ地域の最大都市バーミンガムに本社を置くNECグループ(National Exhibition Centre Group=NEC Group)は、同社が運営するナショナル・エキシビション・センター、リゾーツ・ワールド・アリーナ、アリーナ・バーミンガムが臨時病院として適していると判断された場合には、即時に病院化を進める準備が整っていると発表した。

NECグループの広報担当者は声明の中で次のように述べた。

「NECグループは常にウェスト・ミッドランズ地域のNHS信託基金、警察、消防署と緊密に連絡を取り合っており、当局も弊社の施設の有用性を理解してくれています。私たちもCOVID-19との闘いを全力で支援いたします」

また、サッカーのフットボールリーグ1(3部)のバートン・アルビオンFCも本拠地『ピレリ・スタジアム』をNHSと救急サービスが利用できるよう施設を提供する意向を伝えた。バートンはマッチデーのホスピタリティサービスで使用される食糧についても、食材が市民に行き渡るよう現地のYMCAに寄付した。

バートン・アルビオンのピレリ・スタジアム
バートン・アルビオンのピレリ・スタジアム (画像:Martin Handley -Flickr)

バートン・アルビオンFCのコマーシャル・ダイレクター、フルール・ロビンソン氏はスタジアムの有効活用について次のように話した。

「私たちは、スタジアムやVIPボックス、スイートルームといった施設は、軽症者などを一時的に収容する場所、または移動規制が厳格化され、市民が外出を自粛するようになった場合に食糧を配給する補給基地になりえると考えました。すでにNHS、警察、そして市に対して、ピレリ・スタジアムは利用可能であり、クラブとしても協力したいと申し出ています」

イングランドでは、プロサッカー(1~4部)は4月30日まで延期されることが決定している。

ウェールズ最大のスタジアムも利用可能に

イングランド以外では、カーディフ市内のプリンシパリティ・スタジアムが臨時病院等に利用可能であることを、ウェールズ・ラグビー協会(WRU)がウェールズ国民議会とNHSに伝えた。

73,931席のプリンシパリティ・スタジアムはラグビーとサッカーのウェールズ代表のホームスタジアムで、1999年の開場以来、毎年130万人以上が来場する欧州屈指のスタジアムだ。可動式屋根が設置されており、以前にも大規模な年越しイベントが市内で開催された際に、セントジョン・ウェールズ病院によって臨時病院として使われた経緯がある。

WRUの広報担当者はニュース配信サイトのWalesOnlineに対して次のように話した。

「WRUとしては、大型施設を必要とする局面が来た場合には、プリンシパリティ・スタジアムの利用の面で協力ができることを議会やNHSに申し出ました。

政府当局とWRUは、これまでにプリンシパリティ・スタジアムで開催された大規模イベントで何年も協力してきた関係があり、当局もスタジアムを熟知しています。状況は目まぐるしく変化しており、難しい局面が続きますが、引き続き関係当局と協力しながら動向を注視していきたいと思います」

なお、WRUの発表に先駆け、ウェールズのラグビー界では、欧州最高峰リーグのひとつであるギネス・プロ14に所属するラネリ市のスカーレッツが、カーマーゼンシャー州議会との協議後に、500床の病床を確保できるように本拠地『パーク・イ・スカーレッツ』の病院化に協力することを伝えている。

スカーレッツのパーク・イ・スカーレッツ
スカーレッツのパーク・イ・スカーレッツ (画像:UKbride)

Copyright: Xperiology/TheStadiumBusiness.com - reproduced with permission.
元記事 - EXCEL TO BE TRANSFORMED INTO COVID-19 HOSPITAL

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