オーストラリアのニューサウスウェールズ(NSW)州政府は、2000年に州都シドニーで開催された夏季五輪のメイン会場となったANZスタジアムの改修デザインを公表した。改修費は8億1000万豪ドル(約602.5億円)で、球技専用スタジアム化による「臨場感いっぱいの劇場化」が期待されている。
シドニー･オリンピック･パーク最大の施設で、スタジアム･オーストラリアという正式名称でも知られるANZスタジアムだが、ここ数ヶ月は州選挙の焦点となったこともあり、様々な物議を醸してきた。
大規模改修によるアップグレードが決定したANZスタジアムとは対照的に、シドニー市中心部のムーア･パークの球技専用スタジアムのアリアンツ･スタジアムは解体後に新築で建て替えられることが決定している。
ANZスタジアム改修計画については、2019年6月に実施された13人制リーグ式ラグビーのプロリーグ統括機構であるナショナル･ラグビー･リーグ(NRL)と参加クラブの協議後に公表された。今回、NSW州は設計業者として選定されたコックス･アーキテクチャー(Cox Architecture)社によるコンセプトデザインを発表。NSW州大規模開発申請の窓口を通じ、同州に住む市民の意見を募っている。
今回発表された改修計画のマスタープランには、陸上競技場だったANZスタジアムの球技専用スタジアム化と、それに伴う下層スタンドと中層スタンドの傾斜角度を急にすることによるサイトライン(可視線)の確保といった観戦環境の改善策が盛り込まれている。収容人数は83,500人から70,000人に減少するが、コンサート開催時には追加で20,000人が利用できるとしている。
南北スタンドの屋根は新たに設置し直し、東西スタンドの屋根は既存の屋根構造を延長することで、すべての常設席を覆う「観客席カバー率100%」を達成。改修後、東西スタンドは現在5mピッチに近づき、南北スタンドにいたっては18mも近くなる。
州の建築設計報告書によると、下層スタンドと中層スタンドだけで約50,000人の観客を収容し、(クイーンズランド州ブリスベンの)サンコープ･スタジアムや(ウェスタン･オーストラリア州パースの)オプタス･スタジアムよりもピッチに近い観戦環境が整備されるため、臨場感いっぱいの劇場のような雰囲気を味わうことが可能となる。
南北側のファサードは解体され、新たなファサードと現在の倍の高さを持つコンコースに繋がる入場口が整備される。また、飲食売店やトイレ、チームが使用する諸室、会員やスポンサー専用のホスピタリティ施設、記者席や中継放送施設、倉庫などのバックヤードも改修される。
NSW州政府のスポーツ大臣代行、ジェフ･リー氏はSydneyMorningHerald紙に対し、ANZスタジアムの改修工事は2023年の第1四半期中に竣工する予定だとしたうえで、次のように話した。
「NSW州政府は、スタジアム･オーストラリアを世界屈指のスタジアムにするため、改修工事に全力を尽くす所存です」
NSW州大規模開発申請に関する問い合わせは2019年9月26日～10月23日で受け付けられ、多くの市民が計画に対する疑問点を確認する機会を得た。NSW州政府のアンシア･サージェント法令遵守・工業用地・主要用地担当エグゼクティブ･ディレクターは、市民の参画について次のように話した。
「州の開発事業において、地域コミュニティとの協議は非常に重要です。開発の申請者は、事業に関する問い合わせに返答する義務があるので、市民の皆様のご意見やご質問は大歓迎です。オンライン上で簡単に問い合わせができる仕組みになっており、多くの方にご参加いただきたいと思っています」
今回の改修により、ANZスタジアムの運用可能期間は40年間延長されると想定されているため、NRLのグランドファイナル(プレーオフ決勝)が今後25年間、引き続きシドニーで開催されることが確定する。また、コンサートなどの大型イベントの誘致についても期待が高まっている。
※金額はすべて2019年10月下旬で換算
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元記事 - ANZ STADIUM REDEVELOPMENT PLANS REVEALED
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