強豪復活を目指すブラッドフォード・ブルズ、歴史的なオドサル・スタジアムとの決別を選択
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85年間ブラッドフォード・ブルズの本拠地だったオドサル・スタジアム
85年間ブラッドフォード・ブルズの本拠地だったオドサル・スタジアム (画像:BradfordBulls)

イングランドのリーグ式(13人制)ラグビー、ベットフレッド・チャンピオンシップ(2部)のブラッドフォード・ブルズは、計画される新スタジアムへの移転を見据え、歴史的な本拠地「オドサル・スタジアム」に別れを告げた。当面の間は、同じベットフレッド・チャンピオンシップに所属するデューベリー・ラムズの本拠地であるテトリーズ・スタジアムを共用することになる。

1933年に開場したオドサル・スタジアムは、イングランドで最も歴史的なスポーツ施設のひとつとして愛されてきたが、近年のブラッドフォード・ブルズの凋落に呼応するように多くの課題が表面化していた。1954年には、同国のリーグ式ラグビーの国内カップ戦のチャレンジカップの決勝戦再試合が開催され、10万2,569人もの大観衆が観戦に詰め掛けたことでも知られる。

1990年代と2000年代には、黄金期を迎えたブルズの躍進もあり、平均観客動員数が11,000人を越える年が続いたが、2012年にブルズが経営不振で破産管財人の管理下に置かれてからは、2024年の2部降格、そして2017年のクラブ解散といった苦難に直面した。2018年に別団体としてベットフレッド・リーグ1(3部)から再出発し、見事に1年でチャンピオンシップへの昇格に成功したブルズだが、著しく老朽化したオドサル・スタジアムでの試合開催は経済的に合理的でないとの判断により、85年間ホームとして利用してきた同スタジアムを去ることになった。

オドサル・スタジアムはブラッドフォード市が所有する施設だが、2012年のブルズの経営危機の際に、リーグ式ラグビーの統括団体であるラグビー・フットボール・リーグ(Rugby Football League=RFL)が同スタジアムの借地権を保有せざるをえない状況に追い込まれたため、新団体として設立されたブルズは、オドサル・スタジアムの借地権契約を引き継ぐかどうかの決断を迫られた。ブラッドフォード・ブルズのアンドリュー・チャーマーズ会長は、クラブが借地権契約に署名せず、長年のホームだったオドサル・スタジアムを去る決断をした理由について、次のように話した。

「長年にわたり、オドサル・スタジアムはブラッドフォード・ブルズの本拠地としてクラブと共に歴史を紡いできました。世界王者だった黄金期や3部からの出直しを強いられた苦難の時代、そして組織のかたちを変えながら降格や昇格の浮き沈みを体験した近年も、ブルズの物語の舞台は常にオドサル・スタジアムでした。

前身クラブの運営母体であったブラッドフォード・ブルズ・ホールディングス(Bradford Bulls Holdings)社は2002年に、オドサル・スタジアムの不動産借地権契約に合意しました。借地期間は150年間です。その後、クラブを取り巻く状況が変化する中で、オドサル・スタジアムの維持管理および改修の義務が、所有者であるブラッドフォード市から賃借者であるクラブ運営会社に移りました。

当時のブラッドフォード・ブルズ・ホールディングスがスタジアムの管理を行なったことで、400万ポンド(約5.3億円)の整備事業費が交付され、サウスバンク・スタンドを建てることができたと指摘される方もいらっしゃると思いますが、同時にクラブが老朽化が進むインフラ資産の維持管理義務も背負ってしまったことが事実です。

サウスバンク・スタンド
サウスバンク・スタンド (画像:NorthernWonder)

オドサル・スタジアムの場合は、必要不可欠な修繕や改修、代替スタジアムの建設事業や用地確保などに使う資金を減債基金として積み立てておくべきだったのですが、私が知るかぎりそのような措置はなされていませんでした。減債基金の必要性については、オドサル・スタジアムの借地権契約における大きな懸念点として挙げています。

他にも、不透明な維持管理コストや今後設定される安全基準に準拠する場合の負担、実際のスタジアム運営コストなど、懸念材料が多くあったことが、私がオドサル・スタジアムの借地権契約に合意しなかった理由です」

チャーマー会長が新たな借地権契約に署名しなかったことで、9月1日のシェフィールド・イーグルス戦がブルズにとってオドサル・スタジアムでプレーする最後の試合となった。チャーマー会長によると、ラムズのオーナーであるマーク・ソーヤー氏が提案した「非常にありがたい好条件の契約」に合意したことで、2020年および2021年シーズンはラムズの本拠地のテトリーズ・スタジアムで戦うことが決まった。

また、チャーマー会長は、ラムズとの契約を締結する前に、ブルズがサッカーのフットボールリーグ1(3部)のブラッドフォード・シティFCの本拠地「ユーティリタ・エナジー・スタジアム」や、ナショナルリーグ・ノー ス(6部)のブラッドフォード(パーク・アベニュー)AFCの本拠地「ホースフォール・スタジアム」を共用する可能性についても吟味したことを明らかにしつつ、次のように話した。

「今後2年間、私たちの新たな本拠地となるデュースベリーのテトリーズ・スタジアムは、こじんまりとした雰囲気の良いスタジアムで、(ブラッドフォードを通る主要高速道路の)M606号線から16kmしか離れていません。現在の収容人数は5,100人ですが、必要とあらば8,000人収容に拡張できる設計になっています。

実際に試合をしてみて、そして慎重に調査した結果、テトリーズ・スタジアムは私たちが新スタジアムを建設する間の一時的なホームスタジアムとしては、手頃な価格の実用的な施設だと判断しました。

また、クラブは新スタジアムについても立地候補地の特定作業を開始しており、現在、候補地の1ヶ所についてブラッドフォード市に照会中です。

すでに、豊富なスタジアム建設の実績を持つ建設会社と協議を重ね、ブラッドフォード市内の手頃な候補地の調査業務と実現可能性の評価業務について了解覚書に署名しています。将来的に新スタジアムを本拠地とした場合のコスト管理が非常に重要になってくることもあり、手頃な候補地という条件は特に強調したい部分です。

新スタジアムの建設は、今後2~4年をかけて取り組む大型事業になりますが、作業はすでに開始しており、クラブは最後までしっかりと取り組んでいくつもりです。ブルズがブラッドフォード市内に本拠地を持つことが大事ですので、今後も新スタジアム建設事業については、新しい情報が入り次第、サポーターの皆様にもお伝えしていきたいと思います。いずれにせよ、私がクラブの陣頭指揮を執っているかぎり、私たちはブラッドフォード・ブルズとして存在し続けます」

また、デュースベリー・ラムズのオーナー、マーク・ソーヤー氏は、ブルズと締結した本拠地共用契約について次のように話した。

「現在のような移行期に、ブラッドフォード・ブルズのような象徴的なクラブを支援することは私たちにとっても非常に大切なことです。もちろん、テトリーズ・スタジアムの共用については、私たちラムズも2年間影響を受けるわけですから、両クラブが互いに受け入れられる契約内容を準備して交渉にあたりました。

現在のテトリーズ・スタジアムの収容人数はチャンピオンシップの公式戦開催基準を満たしていますが、もしブルズが昇格を達成した場合でも、スーパーリーグ(1部)の公式戦開催基準を満たせるよう、すでに収容人数拡張計画を用意しています」

デュースベリー・ラムズのテトリーズ・スタジアム
デュースベリー・ラムズのテトリーズ・スタジアム (画像:Weallstandtogether)
テトリーズ・スタジアムのメインスタンド
テトリーズ・スタジアムのメインスタンド (画像:Weallstandtogether)

2019年8月、RFLは、ブラッドフォード・ブルズがテトリーズ・スタジアムでホーム戦を興行することを条件付きで許可したが、対象となったのは2020年シーズンの1年間のみで、ブルズが当初希望していた2年間の使用は見送られた。ブルズ経営陣が描くブラッドフォード市内の新スタジアムへの移転計画は、今後もRFLによって厳格に精査されることになる。

※金額はすべて2019年9月下旬で換算

Copyright: Xperiology/TheStadiumBusiness.com - reproduced with permission.
元記事 - BRADFORD BULLS SET FOR MOVE FROM HISTORIC HOME

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