サッカーのイングランド・プレミアリーグ(1部)のアーセナルFCは、英国のスポーツ施設用としては最大となる蓄電池システム(BSS)を本拠地「エミレーツ・スタジアム」に設置した。
このBSSは英国に拠点を置くピボット・パワー(Pivot Power)社が開発し、ダウニングLLP(Downing LLP)社の投資によって設置が実現した。約60,000席のエミレーツ・スタジアムで1試合(90分間)に消費される電力量(2,700戸の住宅の2時間分の電力に相当)を蓄電することが可能だ。
アーセナルはグリーン電力の調達を実施しており、2016年にはオクトパス・エナジー(Octopus Energy)社とパートナーシップ契約を結んでいる。今回設置されたBSSにより、アーセナルはピーク時の電力購入を回避し、電気料金が安価な時間帯に購入・蓄電し、ピーク時に使用できるようになる。
アーセナルのBSS(3MW/3.7MWh)はスポーツ施設に設置されたものとしては世界最大級で、英国のサッカークラブとしては初の取り組みだ。
消費する電気料金が節約されるだけでなく、スマートグリッド支援による収入も見込め、財政面での即効性の高い恩恵が期待されている。2019年の夏には、追加のBSS(1MW/1.2MWh)も設置予定だ。
クラブのマネージングディレクター、ヴィナイ・ヴェンカテシャム氏は、BSS設置について次のように話した。
「今回のBSS設置は、クラブの電力使用形態の効率化において大きな進歩といえます。また、一企業としても、二酸化炭素排出量の削減を目指した取り組みが前進したのは重要なことです。クラブは2016年よりオクトパス・エナジー社のグリーン電力を利用しており、導入したBSSは私たちの取り組みをさらに強化するものです」
アーセナルの取り組みは、低酸素経済への移行を目指す英国社会の方向性と合致するもので、より多くの再生可能エネルギー発電を促し、電気自動車(EV)やヒートポンプといったクリーンテクノロジー産業の成長を支援する推進事業としても期待されている。
アーセナルのBSSは、電力テクノロジー大手のオープン・エナジ(Open Energi)社がマーケットシグナルに応じて自動的に取引・最適化できる仕組みになっており、すでにナショナル・グリッド(National Grid)社との間で周波数応答サービス(FFR)を提供する契約が締結されている。
また、BSSを開発・設置したピボット・パワーが今後15年間の運営管理も担当する。BSSは、ナショナル・グリッドの需給バランスを安定化する目的でも使用され、電力サービス料が収入となる。売電益はピボット・パワー、ダウニングLLP、アーセナルFCの三社で分配するスキームだ。
ピボット・パワーのマット・アレン最高経営責任者(CEO)は、BSS設置について次のように話した。
「アーセナルは、サッカークラブや他の大口電力消費者がどのように英国の気候変動対策や大気清浄目標を支援できるか、道筋を示してくれました。蓄電池は、費用効率が高い低炭素経済を目指す上で中心的な役割を果たすもので、私たちは政府や地方自治体、民間企業の皆様の取り組みをお手伝いしたく思っています」
アーセナルは、消費電力の100%をグリーン電力に切り替えた最初のプレミアリーグクラブで、ソーラーファームと嫌気性消化タンクで構成される電力ネットワークから電力を調達している。
2016年にオクトパス・エナジーとパートナーシップを締結し、2017年にグリーン電力へ切り替えて以来、同クラブの二酸化炭素排出量は700万kg削減された。これはエミレーツ・スタジアムの全容量の3.9倍に相当する。
また、同クラブは従来のナイター照明に比べ、消費電力が30%減となるLED投光器を使用し、エミレーツ・スタジアムの廃棄物の80%を再利用している。スタジアムで廃棄された生ゴミは全て嫌気性消化タンクに送られ、クラブが使用する電力に変換されている。
アーセナルは現在、エミレーツ・スタジアムの電力料金や二酸化炭素排出量の削減といった小規模事業の枠組みを超え、世界の電力格差解消(無電化地域の課題解決)に向けた大型プロジェクトを、オクトパス・エナジーとピボット・パワーと共に進めている。
この新プロジェクトの詳細については、後日、クラブから発表される予定だ。
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元記事 - ARSENAL CLAIMS FIRST WITH EMIRATES STADIUM INITIATIVE
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